保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

思想・哲学

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(6) ~「アイデンティティという危機」~

《一義的なアイデンティティに硬直し,単一の価値に凝り固まった自己はもはや思考することはできない.自己―思考する存在者としての自己―にとっての危機は,さまざまな価値を整序化する何らかの中心的・支配的な価値が欠けていることーいわゆる「アイデンテ…

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(5) ~アイデンティティの危機~

《「自分が何者であるか」が社会とのつながりにおいて把握され、かつ実感されているものがアイデンティティであり、これが危機にさらされるとき、人はいきいきとした存在感や生の目標をもてなくなる》(宮島喬『デュルケム 自殺論』(有斐閣新書)、p. 96) …

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(4) ~アノミー~

《産業上あるいは金融上の危機が自殺を増加させるといっても、それらが、生活の窮迫をうながすためではない。なぜなら、繁栄という危機も、それと変わらない結果をもたらすからである。其の理由は、それらの危機が危機であるから、つまり集合的秩序を揺るが…

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(3) ~自己本位的自殺~

《自殺の第一の形態(自己本位的自殺)…その特徴は、行動への活力を弱める憂鬱なもの思わしさにある。事業、公職、有益な仕事、そして家庭の義務ですら、彼を、ただ無関心とよそよそしい感情にいざなうばかりである。 彼にとっては、自分自身の外へ出ていく…

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(2) ~反省と憂鬱~

ヨーロッパにおいて、同じキリスト教でもカトリックが多いところよりもプロテスタントが多いところの方が自殺率が倍高いというデータから、プロテスタントが「個人主義」的であるのが原因ではないかとデュルケームは考えた。 《たとえば、プロテスタントは自…

有名芸能人の相次ぐ自殺を考える(1) ~自殺の潮流~

三浦春馬、芦名星、竹内結子。立て続けに有名俳優が自ら命を絶ったことは、関係者のみならず国民に少なからず動揺と不安を醸(かも)しているに違いない。一体何が起こっているのか、やや難解な話に踏み込まざるを得ないのだけれども、少し考えてみたいと思…

大阪市廃止住民投票について(4) ~全体主義的手法~

大阪市を廃止するというやり方には、「全体主義」的なものが感じられる。全体主義と言えば、ソ連邦やナチスドイツが思い起こされるところであるが、全体主義化の第一歩が「中間組織」の破壊である。 《共通の世界が完全に破壊され、内部に何らの相互関係を持…

大阪市廃止住民投票について(3) ~漸進主義~

俳人松尾芭蕉の有名な言葉に「不易(ふえき)流行」がある。本質的なものを大切にしつつ新陳代謝を欠かさない。私はここに保守政治の本質があると思っている。その要諦(ようたい)は「漸進(ぜんしん)主義」にある。 漸進主義は、急進的社会変革を嫌う。一…

菅首相の「自助・共助・公助」発言について(3) ~累進課税と共産党宣言~

国に依存するということは個人の自由を放棄するということである。 《今日において社会主義とは、もっぱら課税という手段を通じて広範囲な所得の再配分を行なうことを意味しており、また、福祉国家という制度のことを意味するようになってきている》(F・A…

菅首相の「自助・共助・公助」発言について(2) ~「自助」とは何か~

(「菅氏の描く社会像は… 『自助』優先、弱者置き去りの懸念」:東京新聞2020年9月15日06時00分) 「自助」(self-help)とは、「共助・公助」を見据えた上で、「まずは自分でやってみる」ということではない。それでは「自らを助くる」ことにはならない。菅…

「よい政治」とは何か(4) ~信なくば立たず~

《子貢政を問ふ。子曰く。食を足らし、兵を足らし、民は之を信にす。子貢曰く、必ず已むことを得ずして去らば、斯(こ)の三の者に於て、何をか先にせんと。曰く、兵を去らんと。子貢曰く、必ず已むことを得ずして去らば、斯の二の者に於て何をか先にせんと…

「よい政治」とは何か(3) ~時処位~

「よい政治」であるかどうかは具体的状況次第である。 江戸時代初期の陽明学者・熊沢蕃山(くまざわ・ばんざん)は、物事の善し悪しは「時処位(じしょい)」によって変わることを説く。 《法は、聖人が時・所・位に応じて、物事に適宜であるように作られた…

「よい政治」とは何か(2) ~中庸の徳~

子曰く、中庸の徳たるや、其れ至れるかな。民久しきこと鮮(すくな)し。【雍也第六】 《政治に於て、治者と被治者との関係ほどに至難のものは無い。この関係を円滑に運転してゆくのが是れ即ち政治で、之が又政治の頗(すこぶ)る至難の所以(ゆえん)である…

「よい政治」とは何か(1) ~渋沢論語~

《よい政治とは、よい政策を着実に推し進めることである。方向性を誤ってはならないし、実行力を伴わないのも困る》(9月4日付日本経済新聞社説) <よい政治>とは何か。<よい政治とは、よい政策を着実に推し進めること>と定義してお仕舞だったら苦労は…

戦後75年の終戦の日を迎えて(1) ~民主主義信者の戦後~

《日本が戦争に敗れて、きょうで75年である。 筆舌に尽くせぬ惨状を経て、この国は戦争の愚かさと平和の貴さを学んだ》(8月15日付朝日新聞社説) 何と偉そうな物言いであろうか。そもそも日本を<この国>などと見放しているのが気に入らない。 我々日…

被爆75年に当たって(2) ~核廃絶こそ恐怖~

私は「核抑止論」が正しいと言っているのではない。ただ「力の均衡」(balance of power)が戦争や紛争を抑止する作用があることは否定しがたいことだと思うだけである。 《75年が過ぎて、いまだ非核の願いは実らない。核の均衡が戦争を止めるという虚構を…

被爆75年に当たって(1) ~「核抑止論」は「虚構」~

《大半の核兵器は、一触即発の臨戦態勢に置かれている。戦争の意図がなくとも、偶発や誤算から核攻撃の応酬がおきる危うさと隣り合わせだ》(8月5日付朝日新聞社説) 戦争状態にないのに誤作動によって核ミサイルが飛び交うなどと危ぶむのは「妄想癖」が過…

東海第二原発再稼働の賛否を問う県民投票条例案否決について(3) ~エドマンド・バーク『ブリストル演説』~

《条例制定は、福島同様、東日本大震災で被災した東海第二原発の安全性に疑問を持ち、避難計画策定の難航に不安を覚えた多くの県民が、再稼働の可否について、事実上、再稼働に関する同意権を持つ県の判断に意見を反映させてほしいと、請求したものだ。 署名…

東海第二原発再稼働の賛否を問う県民投票条例案否決について(2) ~J・S・ミル『代議制統治論』~

代議士は、選挙区民の要求と代議士自らの判断のどちらを優先すべきなのか。いわゆる「委任ー独立論争」と呼ばれるものである。 「委任説」は、代議士は自分を選んでくれた選挙区民に対し責任を負っており、選挙区民の要求に十分応えるべきだする。一方「独立…

松井大阪市長の買い物発言について(2) ~日本は遅れていると思いたがる人たち~

松井発言について内田樹(たつる)神戸女学院大名誉教授は言う。 「CNNに続いてフランスのメディアでも取り上げられました。世界標準に照らせば、ただちに政治生命を失うレベルの大都市の市長としてはありえない『愚行』だからです。大阪の有権者にはその…

「国際女性デー」について(4) ~マルクスの妄念~

《日本は国連の女性差別撤廃条約を1985年に批准し、そのための国内法の整備として男女雇用機会均等法も制定した。 それらによって取り組みは一定進んだが、国際的にみれば実態は大きく立ち遅れている。 世界経済フォーラムが発表した2019年の「男女…

「国際女性デー」について(3) ~日本文化における役割分担~

《まずは政治分野からである。国民の半数を占める女性の民意を反映させるために、政治家の半数は女性であることが自然だ。それが、社会の変化を促すことにつながる》(3月8日付毎日新聞社説) 何を根拠に政治家の半数が女性であることが<自然>というのであ…

「国際女性デー」について(2) ~平等思想 vs. 自生的秩序~

《日本の現状は、世界から取り残されている。世界経済フォーラムの男女平等度ランキングでは、153カ国中121位と過去最低だった》(3月8日付毎日新聞社説) その男女平等最底辺国が経済的には最上位国であるのはなぜか。 私は、生物的に雌雄が分離する…

「国際女性デー」について(1) ~近視眼的平等~

《きょうは国際女性デー。女性の政治的解放を目指す国際的な統一行動日だ。1904年3月8日、米国で行われた女性参政権を求めるデモにちなむ》(3月8日付西日本新聞「春秋」) が、私は、参政権の問題は本来、徴兵制と併(あわ)せて考える必要があると思うので…

オークショットと大阪都構想(3) ~人が活躍できる「場」の必要~

大阪には物質的にはたくさんのものが「有(あ)る」。大阪が衰退していったのはそれらを有効に活用しなかったからである。「都構想」とは、この今有るものを有効活用しようとするのではなく、今有る「無駄」を省(はぶ)こうとするものである。 が、古来「無…

オークショットと大阪都構想(2) ~得られる可能性と失う確実性~

第41回サントリー学芸賞に選ばれた、善教将大・関西学院大准教授の「維新支持の分析」によると、 《維新の台頭と躍進は、橋下氏の政治手法などからポピュリズム(大衆迎合主義)と結び付けて語られがちだが、決してそうではないという。 個別利益の代表者…

オークショットと大阪都構想(1) ~愛着心~

《地域政党・大阪維新の会が推進する「大阪都構想」。その賛否を問う2度目の住民投票が11月にも実施される見通しだ》(2月25日付京都新聞社説) 大阪維新の会(以下、「維新」)ある限り、その大看板たる「大阪都構想」(以下、「都構想」)を取り下げる…

後藤新平の「政治倫理化運動」について(5) ~スターリンの掌の上で踊らされた後藤新平~

後藤新平は、まさに「聖人君子」の見本のような人である。が、こういう人に限ってコロッと騙(だま)される。 1928(昭和3)年1月7日、共産党中央執行委員会にて後藤新平はスターリンと会談を行った。 後藤 支那の政情は益(ますます)混乱を重ねこの儘(ま…

後藤新平の「政治倫理化運動」について(4) ~「今人大眼目なし」~

《我輩が現代の國情、ことに政界の狀况を眺めまして、憂慮痛憤に堪へざることは、今日の日本に於いて、實に奇怪なる政治用語が流行し、これが爲めに國民精神の根本を茶毒(とどく)したと申すことであります。 それは、何であるかと申しますと、『政治は力な…

後藤新平の「政治倫理化運動」について(3) ~小廉曲謹(しょうれんきょくきん)~

《日本現代の思想的傾向は如何相なつて居るのであるか。只目前の小利害にのみ齷齪(あくせく)して、こんな空氣の全國に瀰漫(びまん)する結果として、國民の腦裡は知らず識らず小乘主義の人生觀を以て滿たされておらないでありませうか。 而(しか)して之…