保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

半藤一利『昭和史』を批判的に読む(1) ~南京大虐殺~

作家・半藤一利氏が亡くなった。私はNHKの歴史ドキュメンタリー番組の監修者として必ずや名前の挙がる氏の歴史観に予(かね)てから疑問を抱いていた。この度90年の生涯を終えられた氏への私なりの「弔(とむら)い」として主著『昭和史』を読み返して…

コロナ対策について(3) ~新型コロナと経済~

《厚生労働省は毎年、9月初旬(年によって8月末の数日を含む)から翌年5月末までの間、1週間ごとにインフルエンザの発生状況を取りまとめている。これによると、2020/21年シーズンの8月31日から1月17日までの20週間の累積の患者数は、全国でわず…

コロナ対策について(2) ~夏以降の無策~

第2は「緊急事態宣言」である。これ以上感染者数が増えれば医療崩壊しかねないということで、このような措置に踏み切ったとされるのであるが、これにも幾つか疑問がある。 夏の第2波から冬の第3波までに時間があったにもかかわらず、対策が打てていなかっ…

コロナ対策について(1) ~入国制限の緩和~

18日の菅義偉首相の施政方針演説を受け、朝日社説子は次のように書く。 《喫緊の課題は、言うまでもなくコロナ対策である。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)の度を増しているというのに、行動変容を求める政治や行政のメッセージは、人々には届いていない。…

バイデン米大統領就任について(3) ~多様性という名の偏見~

《多様性を重視した政治姿勢も特徴だ。副大統領に、女性、黒人、アジア系で初のハリス氏が就任し、内務長官に先住民系として初の閣僚となる女性下院議員のハーランド氏を登用する。 ホワイトハウスの運営を支える政治任用スタッフも6割が女性になる。白人男…

バイデン米大統領就任について(2) ~価値を共有する国々の協調が必要だ~

《グローバル化で相互依存が進む現代は、二項対立では捉えられない。 バイデン政権は、旧来の国単位の安全保障観から転換するべきだ。相対的に米国の存在感が陰る流れは変えられそうにないが、その分、民主主義の価値観を共有する国々との連携を強めるのは合…

バイデン米大統領就任について(1) ~陰鬱な船出~

《米国の新政権が、これほどに沈鬱(ちんうつ)な雰囲気のなかで発足した事態があっただろうか。 いつもであれば、就任式典は民主主義の原点を確認する祝祭の場だった。国際社会は超大国の新リーダーの言葉に、世界の針路を見いだそうとした。 その米国が今…

韓国慰安婦判決について(3) ~情報戦に負けている日本~

《歴史問題は解決が難しい。一般的には第三国の仲裁や国際的な司法判断にゆだねる選択肢はあるが、できる限り、当事国間の外交で問題をときほぐすのが望ましい。 その意味で日韓両政府が省みるべきは、2015年の「慰安婦合意」とその後の対応だ。 粘り強…

韓国慰安婦判決について(2) ~根拠は日本側が提供の怪~

《判決は事実無根で耳を疑う。日本による「計画的、組織的、広範囲に行われた反人道的な犯罪行為」などと断じたが、調査や実証的研究で、女性を組織的に連れ去って慰安婦にしたという「強制連行」説は否定されている》(1月9日付産經新聞主張) <「強制連…

韓国慰安婦判決について(1) ~日本の常識は世界の非常識~

《韓国で故人を含む元慰安婦ら12人が、日本政府を相手取り、損害賠償を求めていた。ソウル中央地裁は原告の請求通り1人当たり1億ウォン(約950万円)の支払いを命じた》(1月9日付産經新聞主張) これに対し産經主張子は、 《判決は、史実を歪(ゆ…

藤谷イタリア学会会長の菅首相批判について(3) ~「民主主義は多数決を捨てること」という暴言~

藤谷道夫イタリア学会会長は突拍子もないことを言い出す。 《民主主義は多数決ではなく、逆に多数決を捨てることです》(東京新聞2021年1月5日06時00分) 多数決を捨てて、どうやって物事を決しようと言うのだろうか。 《現代の民主主義はロゴス(…

藤谷イタリア学会会長の菅首相批判について(2) ~偏見の表出~

《公務員は国民全員の利益のために働く。政権が間違った判断をすれば、それを国民のために批判することは、むしろ公務員の義務である》(「日本学術会議会員任命拒否についてイタリア学会による声明」) これはその通りである。が、問題は、政権の判断が間違…

藤谷イタリア学会会長の菅首相批判について(1) ~的外れの声明~

イタリア学会の藤谷道夫会長が「日本学術会議会員任命拒否についてイタリア学会による声明」を出し、菅義偉首相を批判した。これを東京新聞は、 《日本学術会議の会員任命拒否をめぐるたくさんの抗議声明の中で、博識に裏打ちされた豊かな表現で異彩を放って…

学問の自由と平和(2) ~学術会議は憲法23条の適用外~

日本国憲法 第23条 学問の自由は、これを保障する。 ー 〇 ― 《最高裁の判例も取り込んで、23条の保障は研究の自由にとどまらず、成果を発表する自由、大学などでの教授の自由、そして大学の自治・自律に及ぶとの見解が定着した。 いま注目の日本学術会…

学問の自由と平和(1) ~戦前戦争を煽り自由を抑圧したのは朝日だった~

《79年前の12月8日、日本は米英両国に宣戦布告した。戦場は中国大陸から太平洋に広がり、1945年の敗戦に至る。以後「平和国家」の理念を掲げて歩んできた道をふり返り、足元を見つめ直す日としたい》(12月8日付朝日新聞社説) <「平和国家」>…

大飯原発許可取り消しについて(3) ~問題解決には核技術の向上が必要だ~

《福島の例を引くまでもなく、地震や津波、火山噴火など、想定を上回る規模の災害が襲ってくる恐れは常にある。だからこそ、万が一にも事故があってはならない原発については、安全側に立って基準を定め、それに基づいて審査や規制に当たらなければならない…

大飯原発許可取り消しについて(2) ~司法にもたれ掛かる人達~

《判決のポイントは、平成23年の東京電力福島第1原発の過酷事故を踏まえて設置された原子力規制委員会が両機に対して行った耐震性の審査のプロセスに不合理な点があるとしている点だ。 「規制委の調査審議および判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落が…

大飯原発許可取り消しについて(1) ~分を弁えない素人達~

原発稼働を巡る判決が出るたびに同じことを言い続けているので食傷気味と言わざるを得ないけれども、各紙社説が挙(こぞ)って取り上げている以上これを看過するのもどうかと思うので、今回も懲りずにこの問題を取り上げてみたい。 《関西電力大飯原発3、4…

洋上発電利権と地球温暖化カルト

《経済産業省は16日、福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を、不採算を理由に来年度に全て撤去すると福島市での会合で表明した。東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴として、民主党政権時に事業化が決まり、約600億円が投じられていた》(z…

5年が経った日韓慰安婦合意について(2) ~安倍首相のお詫びと反省の誤り~

《当時の安倍首相は、元慰安婦に「心からおわびと反省の気持ち」を表明した。韓国で設立された元慰安婦を支援する財団に10億円を拠出するなど、日本側は誠実に合意を実行に移してきた。 米国なども合意を高く評価し、元慰安婦の7割以上が財団からの現金支…

5年が経った日韓慰安婦合意について(1) ~予想された合意反故~

《日韓両政府が慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年12月の合意から、28日で5年が経過した。形骸化しているのは残念だ》(12月29日付読売新聞社説) 幾つかの新聞社説がこの問題を取り上げているが、私にはこの問題を5年…

いつまで「アラブの春」という幻想を抱き続けるのか(2) ~民主主義は白魔術~

《春という言葉が持つ響きとは裏腹に、中東は今日もアラブの春が残した内戦やイスラム過激派の台頭、それに伴う経済の悪化に苦しむ。世界はこの間、テロの拡散や難民の増加など、脅威は中東だけの問題にとどまらないことを目の当たりにしてきた》(12月1…

いつまで「アラブの春」という幻想を抱き続けるのか(1) ~平和呆けの国に住まう民主主義信者の「幻想」~

12月20日付読売社説の「アラブの春10年 いつまで血を流し続けるのか」という標題が気になった。なんとも「上から目線」ではないか。彼等とて血を流し続けたくて流しているわけではない。それなのに安楽に<いつまで血を流し続けるのか>などとどうして…

繰り返される「バスに乗り遅れるな」式言説(2) ~発想力の貧困~

《のちになって、近衛が大政翼賛会を作るため、諸政党に解党を要求したというようなことがいわれたが、これは微妙な点もあるが事実ではないようである。 (中略) 新体制準備会が開かれたのは8月28日だし、大政翼賛会が発足したのは10月12日のことで…

繰り返される「バスに乗り遅れるな」式言説(1) ~「バスに乗り遅れるな」の誤解~

12月10日の読売社説は、「脱ガソリン車 世界の流れに乗り遅れるな」との標題を掲げている。 《地球温暖化の防止に向け、ガソリン車から電気自動車(EV)などへの転換を目指す動きが世界で急速に広がっている。日本も、官民で対応を急がなければならな…

経済音痴の日経社説

日本経済新聞は、一般紙とは異なった視点を提供してくれると思っている向きもおそらく少なくないのだろう。が、私の目には度々それが「おかしなもの」に映ってしまうのである。例えば、コロナ禍の今、財政再建の必要を前面に出すようなところである。 《少子…

元日社説を読む(2) ~毎日社説~

《民主政治は合意過程を重要視するが故に、意思決定に時間がかかるという欠点が指摘されてきた。それがコロナという容赦のない敵との闘いで顕在化した。 民主主義の旗手である米国で感染者が1900万人を超え、世界最悪となっていることが危機を象徴的にイ…

元日社説を読む(1) ~朝日社説~

《パンデミックが世界を覆い尽くす速度は昔日の比ではない。 地球環境は「気候危機」に立ち至った。 核の恐怖を伝える「終末時計」は昨年、人類滅亡まで「残り100秒」を指し、史上最悪を記録した。 いずれも、現代文明が産み落としたグローバルな巨大リス…

頓珍漢な読売元日社説(3) ~寒心に堪えない社説~

《技術も人間の営みである。人間力こそ国力の礎(いしずえ)であることを思い起こしたい。 デジタル化の問題でも、同様のことがいえる。国と地方の行政手続きなどは、システムをデジタル化して、国民の利便性を高める必要がある。しかし、教科書のデジタル化…

頓珍漢な読売元日社説(2) ~もはや意味不明~

《感染症は人の接触から蔓延(まんえん)し、生産活動を妨げて、供給と需要を同時に阻害する。そうだとすれば、対策としてはコロナを収束させることが第一となる。 なすべきことは、米国のシンクタンク(新経済思考研究所)の論文の、簡潔な表題の言葉に示さ…