保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

バイデン米大統領就任について(3) ~多様性という名の偏見~

《多様性を重視した政治姿勢も特徴だ。副大統領に、女性、黒人、アジア系で初のハリス氏が就任し、内務長官に先住民系として初の閣僚となる女性下院議員のハーランド氏を登用する。

 ホワイトハウスの運営を支える政治任用スタッフも6割が女性になる。白人男性が主要ポストを占めたトランプ政権とは一線を画す》(1月20日付沖縄タイムス社説)

 これは偏った<多様性>の考え方だろう。多様とは何も「人種」に限ったものではない。多様はもっと多種多面的なものであろう。

 そもそも米国は50の州が合わさった「合州国」(United States)である。各州には独自性があり、多様な考え方がある。

 政権内の人種が多様であっても、必ずしも多様な意見が政策に反映される保証はない。当たり前であるが、求められるのは「見場」の多様性ではなく、多様な意見が政治に反映されることの方である。

 男女比の問題も同様に偏見である。問題なのはスタッフの女性比率ではなく、公正に女性の意見が政治に汲み取られるかどうかであろう。男性は男性のことしか考えない、だから女性スタッフを増やさなければならないというのは明らかに偏見であろう。

《トランプ政権は、1979年の米中国交正常化以降の関与政策を見直し、中国共産党独裁体制との対決姿勢を打ち出した。同政権の功績の一つであり、バイデン氏にも堅持してもらいたい。

 就任式前日には、トランプ政権のポンペオ国務長官が、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定すると表明した。上院の公聴会に出席したブリンケン国務長官候補も「同意する」と応じた。自由台湾の防衛も含め厳しい対中姿勢を継承してほしい》(1月22日付産經新聞主張)

 産經主張子はこのように政策の継承を期待する。が、それなら米国は上を下への大騒ぎをしてバイデン大統領を誕生させる必要などなかっただろう。つまり、バイデン氏が大統領となった以上、トランプ氏の政策をそのまま引き継ぐことは難しいと考えるのが筋だということである。おそらくトランプ氏のような対決姿勢は影を潜(ひそ)めるのではないかと予測される。

《「自由で開かれたインド太平洋」構想とこれを実現するための日米豪印の枠組みは中国の覇権阻止に有効であり、引き続き発展させなければならない》(同)

 が、

《バイデン米次期大統領が菅義偉首相に初めて電話をした11月12日、私は息をのんだ。定着していた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP=Free and Open Indo-Pacific)」が、別の表現(安全で繁栄したインド太平洋)に言い換えられていたのだ》(東京外国語大学教授・篠田英朗「対中で『FOIP』は生き残るか」:産經新聞「正論」2020.12.24)

 Free and OpenをSecure and Prosperousに置き変えたのはシナに配慮してのことではなかったか、というのは穿(うがち)ち過ぎなのかもしれないが、有り得ない話でもない。産經主張子のようにただ「願い事」を並べてみても虚しいだけである。【了】

(参照)楽天ブログ:​「日本の憲法を我々が書いた」なるバイデン米副大統領発言について(1)