保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

憲法

胡散臭い改憲論について(14)/14【最終回】

《憲法が定められてから50年以上たちますが、その間にさまざまな新しい問題が生まれてきました》(櫻井よしこ『憲法とはなにか』(小学館)2000年刊、p. 42) 逆に言うと、憲法制定当時は(大きくは)問題がなかったという認識である。 《時代の変化ととも…

胡散臭い改憲論について(13)/14

《2000年1月に憲法調査会が発足し、ようやく憲法論議が始まりました。しかし、これまでのように、不毛なイデオロギー論を通してのみ憲法を見つめるなら、憲法を論ずるせっかくの機会が十分に活かされるとは思えません。新しい時代に対応していくための…

胡散臭い改憲論について(12)/14

《日本で憲法論議というとイコール第9条の問題ととらえられ、憲法改正といえばタカ派というレッテルが貼られがちです。しかし、今の日本国憲法が抱えている問題点は、決して第9条だけではありません。戦後50年以上1度も改正されていないため、環境権や…

胡散臭い改憲論について(11)/14

櫻井よしこ女史は、 《日本は世界のために役立つことのできる価値観の国で、その力もある》(2024年5月7日付産経新聞) と言う。が、このような考え方が非常に危険な考え方であることは今更(いまさら)言うまでもない。何をもって〈日本は世界のため…

胡散臭い改憲論について(10)/14

米国に対し、岸田氏は、 「もう世界の秩序を米国1人で背負う必要はない。日本は米国とともに手伝います」(2024年5月7日付産経新聞) というようなことを言ったらしい。が、一体何を手伝うというのだろうか。 かつてジョセフ・ナイが、米国上院下院の…

胡散臭い改憲論について(9)/14

《日本国は長い長い歴史を持った素晴らしい国で、岸田さんは米国に対して「もう世界の秩序を米国1人で背負う必要はない。日本は米国とともに手伝います」といった》(2024年5月7日付産経新聞) 米国が「世界の警察」と呼ばれなくなって久しい。軍事力…

胡散臭い改憲論について(8)/14

《岸田さんについて全部いいというふうに思わないが、でも、やることはやってきている》(2024年5月7日付産経新聞) 岸田氏がやったことはと言えば、「移民政策」「国民負担増」「LGBT法」「安倍派潰し」。これで<やることはやってきている>と言…

胡散臭い改憲論について(7)/14

《私が岸田文雄首相の憲法改正の思いを後押しするようなことをいうと、「岸田さんなんて信じられない」という声がある。でも、岸田さんは今までの総理総裁の中で安倍さんとともに何回も何回も「自分の任期で自分の手で憲法改正をやります」といった人だ》(…

胡散臭い改憲論について(6)

<完璧な憲法改正>と言うのであれば、憲法改正と言わず「自主憲法制定」と言うべきである。マッカーサーに押し付けられた憲法を土台として幾ら部分的改正を行っても、「マッカーサー憲法」の基本精神、すなわち、「日本弱体化」は変わらない。 日本国憲法は…

胡散臭い改憲論について(5)

櫻井よしこ女史は言う。 《(3日に改憲派集会の)「公開憲法フォーラム」が開かれ、私は主催者の1人。(会場となった)永田町に多くの人が全国から集まった。会場の向かい側に何十人もの人が旗を立てていた。よくよく耳を澄ますと、私の名前が出てくる。「…

胡散臭い改憲論について(4)

《ジャーナリストの櫻井よしこ氏は4日、自身が主宰するインターネット番組「言論テレビ」で、保守の活動家にも憲法改正に向けた温度差が生じているとして「国柄を体現する憲法をつくりたいのは同じだ」と述べた。また、桜井氏は改憲の実現に関して「いろい…

胡散臭い改憲論について(3)

安倍政権は、「集団的自衛権行使容認」を閣議決定した。これは、事実上の「解釈改憲」であった。安倍政権がこのような遣り方をとったのは、好意的に見れば、朝鮮半島有事が焦眉(しょうび)の急で、憲法改正する時間的余裕がなかったからだということだろう…

胡散臭い改憲論について(2)

「日本保守」派の言う改憲論は、元々「自主憲法」制定だった(はずだ)。現行憲法は、国家主権が奪われた占領期に制定され、国際法「ハーグ陸戦協定」に違反するものであるから、「押し付け憲法」を廃棄し、日本人自らの手で自国の憲法を制定し直そうという…

胡散臭い改憲論について(1)

世間では、改憲論を唱えるのは「保守」と見做(みな)されている。が、注意すべきは、日本における保守には、大きく分けて2つの保守が存在するということだ。1つは、日本古来の文化伝統を守ろうとする保守、謂(い)わば「日本保守」、もう1つは、大東亜…

旭川医大における北海道新聞記者の違法取材について(1) ~自由と権利の保持には不断の努力が必要~

《旭川医科大学(北海道旭川市)の校舎内に許可なく入ったとして、北海道新聞社の記者(22)が建造物侵入容疑で大学関係者に現行犯逮捕された事件で、旭川医大は24日、記者が会議内容を無断で録音していたとして、同社に抗議文を送ったことを明らかにし…

ワクチン開発は国防だ(1) ~ワクチン開発に横槍を入れる日本学術会議~

遅まきながら 《政府は国産ワクチンの開発・生産体制を強化するとして、拠点整備などを行う国家戦略を閣議決定した》(高橋洋一「国産ワクチンが遅れた理由」:ZAKZAK 2021.6.8) 国民が日常生活を取り戻すためには、ワクチンが必要である。したがってワクチ…

皇位継承等の有識者会議について(8) ~5月31日政府有識者会議~

5月31日の政府有識者会議では以下のような意見が出された。 君塚直隆氏「男系男子にのみ皇位継承資格を与えるという現行制度を改定し、女性皇族にも皇位継承資格を与えるとともに、現行の男性皇族と同様に、婚姻時もしくは適切な時期に宮家を創設し、ご自…

皇位継承等の有識者会議について(5) ~権威を規定するのは歴史伝統~

《日本の皇位継承法に於て、女帝の制度の認められた歴史はあるが、女帝は常に配偶者の現存せざる場合に限られていたのであって、女系子孫の継承を認める思想は全然存在しなかった。日本皇室の万世一系とは、男系子孫一系の意味であることは論をまたぬ。然(し…

ジョン・ロック「法が終わるところ、暴政が始まる」(2) ~自主防衛か対米追従か~

《「集団的自衛権の行使は憲法違反」。戦後一貫した政府見解でした。それをひっくり返した、2014年の安倍晋三内閣による閣議決定は、さしずめ「法が終わるところ」にあたるでしょうか。違憲なのに「合憲」と勝手に内閣が解釈したのですから…。「解釈改憲…

日本国憲法生誕とルソーの教え(5) ~無国籍憲法~

《急進的な民主主義者にとっては、民主主義自体が固有の価値をもっているのであって、民主主義のお蔭でどういう政治が出来るかという政治内容への顧慮は存在しないのだ。しかし、民主主義を排除するために民主主義が利用される危険が存する場合には、急進的…

日本国憲法生誕とルソーの教え(1) ~『社会契約論』~

《18世紀の哲学者ルソーの教えでは、戦争とは相手国の社会契約に対する攻撃です。つまり敗戦国は従前の社会契約を破棄し、新しい原理の社会契約を国民との間で結び直さねばなりません。 それが新憲法をつくる意義です。なのに日本側は「伝統的な原理および…

新型コロナと憲法(5)  ~現実を踏まえぬ理想論~

《憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を生存権として位置付け、13条では「すべて国民は個人として尊重される」ことを保障し幸福追求権を権利として掲げている。 コロナから人々の命と暮らしを守り、壊れかけた社会を立て直すことが、…

新型コロナと憲法(4)  ~憲法第25条の問題~

《憲法第25条1項は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」として基本的人権の柱の一つである生存権を全国民に保障する。その生きる権利や勤労の権利、教育を受ける権利が脅かされている。 コロナ危機は憲法の危機だ》(5月3日付北海道新聞社説) …

新型コロナと憲法(3)  ~「法治主義」と「法の支配」の混同~

《現実と憲法の間に乖離(かいり)が生じていないか。憲法改正を避けることを優先するだけでは、解釈に無理が生じ、「法の支配」が形骸化する恐れがある》(5月3日付読売新聞社説) これは「法治主義」と「法の支配」の混同からくる誤解である。制定法(legis…

新型コロナと憲法(2)  ~対米従属での改憲は危険~

《憲法学が専門の棟居快行(むねすえとしゆき)・専修大学教授は「自由と安全を両立させる必要がある。安全を口実に国家が個人に介入し、内閣の勝手にさせないよう、国会が縛っていくことが大事だ」と指摘する》(5月3日付毎日新聞社説) これはその通りなの…

新型コロナと憲法(1)  ~日本国憲法は改正でなく廃棄すべし~

毎日社説は、 《コロナ対策を突き詰めれば、憲法問題に行き当たる》(5月3日付毎日新聞社説) と言う。そして 《憲法は、国民の「生命、自由及び幸福追求」の権利について「最大の尊重」を国に求めている。だが、過去1年間、憲法が保障する権利という視点…

三島由紀夫が指摘する憲法問題について(3) ~日本には「不文憲法」が相応しい~

《このやうな矛盾は明らかに、第一條に於て、天皇といふ、超個人的・伝統的・歴史的存在の、時間的連続性(永遠)の保証者たる機能を、「国民主権」といふ、個人的・非伝統的・非歴史的・空間的概念を以て裁いたといふ無理から生じたものである》(「新憲法…

三島由紀夫が指摘する憲法問題について(2) ~「国民」とは誰のことか~

1つ問題がある。日本国憲法第1条に言う「国民」とはどのような存在かということである。 ほとんどの人が、日本国籍を有し今生きている人のことを「国民」と考えるだろうが、「死者の民主主義」という考え方もある。 《現今の諸事雑事を問題にする場合、い…

三島由紀夫が指摘する憲法問題について(1) ~憲法1条と2条の矛盾~

日本国憲法 第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 三島由紀夫は、戦後憲法に…

同性婚判決について(3) ~司法に凭れ掛かる護憲派~

《人の生き方はひとつではない。多様性を認め、すべての人が暮らしやすい社会の実現は、新たな活力を生む源泉にもなりうる。 LGBT(性的少数者)の尊厳が守られ、安心して生活できる環境づくりはその大切な一歩だ》(3月19日付日本経済新聞社説) <すべ…