保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

憲法

黒川検事長の辞職について(2) ~<法の支配>とナチス~

<法の支配>にとって何とも都合悪いのが「ナチスドイツ」の存在である。このことを糊塗(こと)しようとするから何を言っているのか分からなくなる。 《「法の支配」の原理に類似するものに、戦前のドイツの「法治主義」ないしは「法治国家」の観念がある。…

緊急事態条項は憲法に必要か(7) ~カール・シュミット「委任独裁」~

《ドイツの法学者カール・シュミットが言う「委任独裁」が思い出される。戦争など非常時に主権者の全権委任によって一時的、例外的に行われる独裁である》(5月3日付北海道新聞社説) シュミットは、「独裁は、ローマ共和国の賢明なる発明」だと言う。 《…

緊急事態条項は憲法に必要か(6) ~国家総動員法は軍部独走ではない~

《しかし、国権が最優先され、個人の権利が著しく抑えられた過去があることを忘れてはならない。1938年に制定された国家総動員法だ。「私権」を制限する法制度の下で国家統制が敷かれ、国民の徴用などを国家が自由にできるようになった。行き着いた先は…

緊急事態条項は憲法に必要か(5) ~我が道を行く産經新聞~

唯一産經新聞だけが緊急事態条項の意義を説く。 《国民に最大限の自由や権利を認め、いつも通りの丁寧な手続きで法律を作り、政府や自治体の行動を決める平時の体制のまま、有事や内乱、大災害といった深刻な緊急事態を乗り切ろうとすると、かえって国民の被…

緊急事態条項は憲法に必要か(4) ~占領下帝国議会の金森答弁にすがる人達~

《コロナ禍を利用した改憲論はナンセンスと考えます。不安な国民心理に付け込み、改憲まで持っていこうとするのは不見識です。現在、国会議員に感染者はいません。ならば今後、感染しないよう十分な防護策を取ればよいだけではありませんか》(5月3日付東…

緊急事態条項は憲法に必要か(3) ~ナチス・ドイツに例える愚~

《憲法は、衆参両院は総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開けないと定める。緊急事態においては、定足数を満たせない可能性はありうる。 立法府が機能しなければ、予算や法案を成立させることができず、的確に対処できまい》(5月3日付読売新聞…

緊急事態条項は憲法に必要か(2) ~自縄自縛の立憲主義~

《国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の理念は、国民に定着し、日本の発展に大きく寄与した。 一方、一度も改正されていない憲法は、急速に変化する日本や国際社会に対応しきれていない。憲法を不断に見直し、適切に機能させることが求められる…

緊急事態条項は憲法に必要か(1) ~毎日社説の頓珍漢~

今年の憲法記念日の各紙社説は、憲法に「緊急事態条項」を追記するかどうかを巡るものであった。 《自民党は緊急事態への対処をテーマに憲法論議を始めるよう野党に求めている。安倍晋三首相は緊急事態条項の導入について「重く大切な課題」と述べ、国会の論…

休校継続と学ぶ権利(1) ~「学ぶ義務」が必要~

《憲法が定める「教育を受ける権利」が、新型コロナウイルスによって脅かされている》(4月3日付朝日新聞社説) さすが憲法大好きの朝日新聞である。冗談(joke)で言っているのか本気で言っているのか分からないが、新型コロナウイルスによって<基本的人権…

同性カップルの権利について(3) ~憲法学内での解釈改憲はやめるべきだ~

《婚姻は「両性の合意」のみに基づいて成立すると定めた憲法について判決は、制定当時は同性婚が想定されていなかったにすぎず、否定する趣旨ではないと指摘した》(3月29日付信濃毎日新聞社説) 憲法解釈において、制定当時想定されていなかったことは、否…

同性カップルの権利について(2) ~隔靴搔痒の要求~

《2015年には同性愛者ら450人余が日弁連に人権救済を申し立てた。日弁連は昨年7月、同性婚を認めないのは重大な人権侵害だとして関連法の改正を求める意見書を政府、国会に提出している》(3月29日付信濃毎日新聞社説) 日本国憲法第24条には、 婚姻…

外国籍の子供の「学ぶ権利」について(5) ~日本語が不自由な外国籍の子供を指導する困難~

《近年とくに増加している外国人は、ブラジル、フィリピンなど、南米や東南アジアから日本へ働きに来る人たちである(いわゆる「ニュー・カマー」)。こうした「ニュー・カマー」の増加は、日本が「経済大国」といわれるまでに経済発展を遂げた結果である。 …

外国籍の子供の「学ぶ権利」について(4) ~外国人の歴史の誤り~

《「外国人の人権」を考えるとき、そもそもなぜ、その外国人が日本で暮らすこととなったのかを、きちんと理解することが、なによりも重要である。「不満があるのなら自分の国へ帰ればいいじゃないか」という、ある意味では素朴な、しかしときには悪意をもっ…

外国籍の子供の「学ぶ権利」について(3) ~<人権>と<基本権>~

《外国人もまた基本的人権の享有が認められるか否かについて、学説は大きく2つに分かれている。 否定説は、憲法第3章「国民の権利及び義務」はあくまで日本国民の権利を保障するものであって、外国人の権利までをも保障するものではない。ただ外国人といえど…

外国籍の子供の「学ぶ権利」について(2) ~人権の前国家的権利性~

日本国憲法第98条2項に次のような条文がある。 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。 だからたとえ日本国憲法と矛盾しようとも「こどもの権利条約」を遵守しなければならない。「こどもの権利条約」が言う…

外国籍の子供の「学ぶ権利」について(1) ~どうして日本国憲法よりも「子どもの権利条約」が優先されるのか?~

《外国籍の子どもには就学義務はないが、国籍を問わず、全ての児童に教育を受ける権利がある。日本も批准した「子どもの権利条約」に明示されている》(2月12日付西日本新聞社説) 子どもの権利条約第28条1項には次のようにある。 締約国は、教育についての…

表現の自由と公共の福祉(4) ~「アームズ・レングス」の原則~

《ここ(=日本国憲法)にいう公共の福祉は、人権の保障そのものの本質から論理必然的に派生する原理であり、憲法の明文にその根拠を有するものではない。したがって、日本国憲法が、その条項に、公共の福祉をもち出したことは、立法技術的にいって無用であ…

表現の自由と公共の福祉(3) ~一元的内在制約説~

《各人の人権の享有およびその主張に対して、なんらかの制約が要請されるとすれば、それは、つねに他人の人権との関係においてでなくてはならない。人間の社会で、ある人の人権に対して規制を要求する権利のあるものとしては、他の人の人権以外には、あり得…

表現の自由と公共の福祉(2) ~宮沢俊義の屁理屈~

「公共の福祉」をどう見、どう考えるのか。 《この問題に対する答えは、だいたい次の2つの型に分れる。 第1説は、(1)基本的人権は、公共の福祉のワク内で(すなわち、公共の福祉に反しないかぎり)、保障される、(2)したがって、基本的人権の行使が、…

表現の自由と公共の福祉(1)

《暴力的な威嚇や政治権力の圧力が、自由な表現を脅かす。あってはならない出来事が、昨年は社会に波紋を広げた。 あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」が代表例であり、一時中止に追い込まれたうえ、文化庁が補助金の交付をやめた。その後、各地…

「人権」と憲法97条(3) ~棚ぼたの基本的人権~

一方、芦部信喜はこの97条を擁護する。 《たしかに、制憲者が明確な憲法論に基づいて、97条を「最高法規」の章に置いたわけではなく、むしろ偶然の経緯で定められた沿革を考えると、11条が存在する以上、97条は無用だという議論も理由がないではない。 しか…

「人権」と憲法97条(2) ~GHQホイットニーの顔を立てた97条~

《人権、人間の尊厳、法の支配、民主主義――。 めざすべき世界像としてSDGsも掲げるこれらの言葉は、西洋近代が打ち立てた普遍的な理念として、今日に生きる。 基本的人権の由来を記した日本国憲法の97条にならえば、「人類の多年にわたる自由獲得の努…

憲法9条を巡って(4) ~9条削除論~

一方、井上氏の説は明快である。 《私は、修正主義的護憲派の憲法解釈は、無理だと思っています。 この解釈は結局、旧来の内閣法制局見解と同じですね。「専守防衛の範囲なら自衛隊と安保は九条に違反しない」。安倍政権が変えようとしているものだけど。 そ…

憲法9条を巡って(3) ~「9条」の解釈は政治的なもの?~

《日本政府は、憲法9条について、日本を防衛するための必要最小限度の実力の保持とその行使は禁じていないとの立場をとってきました。国連憲章51条の規定する自衛権のうち、自国を防衛するための個別的自衛権は行使できます。 他方、自国と密接な関係にあ…

憲法9条を巡って(2) ~長谷部説は解釈改憲~

井上氏は続ける。 《ちなみに、この第2項の冒頭に「前項の目的を達するため」を挿入したのは芦田均なのですが、これによって、自衛のための軍備を合憲とする余地を残した、とする説があります。そういう「隠された意図」があった、と。 しかし、「陸海空軍そ…

憲法9条を巡って(1) ~井上達夫 vs. 長谷部恭男~

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。― 〇 ― さて、新年最初の題目は「憲法9条」である。私はこれまで何度も「9条」について自説を述べてきた。そのことを知っている人であれば、今更感があるだろうが、今回は井上達夫、長…

歴代最長安倍政権について(2) ~集団的自衛権行使容認は違憲~

《これほどまでに日本国憲法をないがしろにした政権は、過去に例がなかろう。歴代内閣が維持してきた憲法解釈を一方的に変更して、集団的自衛権の一部行使に道を開いた》(11月20日朝日新聞社説) 例によって、同様の批判が幾つか見られる。 《安倍政権は、…

川崎ヘイト条例について(3) ~<ヘイト>と<表現の自由>の線引きは不可能~

《今も続く差別的な街頭宣伝に恐怖や苦痛を感じている住民がいる。ネット上でのヘイト被害も深刻となっている。その現実のもとに今回の条例は成立に至った。一方で、憲法の表現の自由との兼ね合いで、懸念の声もある》(12月13日付東京新聞社説) 問題は、<…

核抑止論について(2) ~核抑止論と力の均衡論~

《日本政府には、広島、長崎のような悲劇や核兵器使用の脅しから国民を守る責務がある。だから通常兵力と並んで核抑止力も日本の守りに加える政策を長らく採ってきた。この核抑止力は自前で用意せず、日米同盟に基づき米軍の核戦力つまり米国の「核の傘」を…

ローマ教皇を政治利用する政教分離論者(1) ~言うは易く行うは難し~

日頃、靖国神社参拝の問題となると「政教分離」をうるさく言う人達が、核廃絶に関してはローマ教皇を政治利用する。まさに「二重基準」(double standard)である。 《13億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇が長崎と広島…