保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「個人」とは何か(6) ~西洋思想の二元性~

私は、社会から切り離された<個人>なる存在を先験的に尊重しなければならないとは思われない。尊重すべきは、社会の一員として役割を担い、責任を負い、義務を果たす「国の民」である。 《個人と社会の関係で個人の側を重視するということは、社会を軽視す…

「個人」とは何か(5) ~デカルト教~

個人尊重派の大立者は、おそらくはルネ・デカルトであろう。 《いくたりもの棟梁の手でいろいろと寄せ集められた仕事には、多くはただひとりで苦労したものに見られるほどの出来ばえは無い》(デカルト『方法序説』(岩波文庫)落合太郎訳、p. 22) 「一人」…

「個人」とは何か(4) ~なぜ<個人>は尊重されるべきか~

《憲法13条は、人権の章にある規定であるが、「個人の尊重」原理は、人権保障にとっての基底的原理であるというだけでなく、日本国憲法が採用するすべての価値の基底に置かれるべきものとして理解しなければならない。平和・人権・民主主義(あるいは国民…

「個人」とは何か(3) ~個人の尊重~

日本国憲法第13条曰く。 すべて国民は、個人として尊重される(All of the people shall be respected as individuals)。 おそらくこの条文を受けてであろう、自民党綱領も「個人の尊重」を謳(うた)っている。 《自助自立する個人を尊重し、その条件を…

「個人」とは何か(2) ~明治期の翻訳語~

《「3助」について、首相の説明に見当たらないのはそのバランスです。共助には地域のつながりやNPO活動などに加え、保険料を出し合って生活を守る年金、医療、介護、失業給付などの社会保障制度も含まれます。そこから漏れる人を税で支える生活保護や各…

「個人」とは何か(1) ~もやもやする東京社説~

《「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です。自分でできることは、まず、自分でやってみる。そして、家族、地域で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする」 菅義偉首相が国会での所信表明演説の中でこう述べました。…

シナのTPP参加など有り得ない

「シナ」という言葉は侮蔑語ではない。英語のChinaと同系統の言葉である。が、おそらくほとんどの戦後日本人が洗脳され「中国」と呼ばされてしまっている。 逆に「中国」は「世界の中心の国」という意味であり、このように呼ぶことは日本が「シナ」の支配下…

UN創設75年について(6) ~夢としてのUN~

《聯盟(れんめい)の理念は、徐々にすべての國家の上に擴(ひろ)がるべきであり、かくて永遠平和にまで導いて行くのであるが、その實現(じつげん)性(客観的實在性)は證示(しょうじ)せられ得るのである。何故かと言へば、もし幸運にも、ある強力にし…

UN創設75年について(5) ~小沢一郎『日本改造計画』~

「国連幻想」の好例として小沢一郎『日本改造計画』(1993年刊)がある。 《冷戦時代の国連は、米ソによる覇権争いの場だった。このため、双方の拒否権によって何ひとつ有効な平和維持政策をとれなかった。東西両陣営の上に浮いた存在だったといえる。と…

UN創設75年について(4) ~UNの成果って何?~

《75年の歴史の中でも重要な成果の1つが、1960年に総会で採択された植民地独立付与宣言であろう。「あらゆる形の植民地主義をすみやかに、かつ、無条件に終止させる」と明言した。このため60年代にアジア・アフリカの植民地が次々と独立し国連に加…

UN創設75年について(3) ~どうしてシナが常任理事国なのか~

《国際連盟の失敗の理由はアメリカやソ連が不参加だったことのほかに、総会や理事会が大国も小国もまったく同等の全会一致を基本としたため、連盟全体としての意思が決められなかったことだとされた。(中略) このため1944年のダンバートンオークス会議…

UN創設75年について(2) ~共産主義の巣窟~

《国連は自衛のためか、あるいは集団安全保障に関する場合を除いて、武力による威嚇や武力の行使を認めていない。そして安全保障理事会が総会に優越して、国際紛争の解決に必要な経済的、外交的、軍事的制裁の権限を持つ。拒否権がある常任理事国は5戦勝国…

UN創設75年について(1) ~「国連」は明らかな誤訳~

《国際連合が発足して24日で75年を迎えた》(10月24日付琉球新報社説) 日本で「国際連合」と呼ばれている組織は英語ではUnited Nations(UN)であり、第2次世界大戦における「連合国」がその母体である。どうして日本でいかにも中立的な組織であ…

RCEP署名は軽率だ

《日中韓など15カ国が、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名した。成長著しいアジア地域に巨大な自由貿易圏を築く意義は大きい》(11月15日付日本経済新聞社説) この能天気さは何なのか。米国とシナの新冷戦が勃発している中で、…

福島第1原発処理水放出について(2) ~処理水を放出して原発事故処理を先に進めるべきだ~

《原子炉から出る汚染水は専用の装置で浄化するが、放射性物質のトリチウムだけは除去できず残留したままだ。科学的には安全だと言われても、風評被害が広がる懸念は拭えまい。漁業者ら地元住民から反対の声が上がるのも無理はない。 これ以上、地域にさらな…

福島第1原発処理水放出について(1) ~「ゼロリスク」では何も出来ない~

《東京電力福島第1原子力発電所のタンク群にたまり続けているトリチウムを含む処理水について政府が海洋放出の方針を固めた。 早ければ今月末の関係閣僚会議で正式決定の見通しだ。事故後10年が近づく中で、ようやく見えてきた「処理水メタボ」解決への前…

皇室問題について(3) ~日本国憲法に埋め込まれた「時限爆弾」~

《憲法の規定では、天皇の地位は国民の総意に基づく。専門家ばかりでなく、世論にも耳を澄ませ、開かれた議論をすべきである》(11月6日付東京新聞社説) これは、GHQに潜り込んだソ連のスパイであるトーマス・ビッソンが日本国憲法に埋め込んだ「時限…

皇室問題について(2) ~現代の価値観で伝統を判断する愚~

《性別にこだわらない考え方に立てば「直系長子(第一子)優先制」が採られる。西欧諸国の王室などはその典型例であり、英国のエリザベス女王など有名な女王も珍しくない》(11月6日付東京新聞社説) 話にならない。「皇室」(権威の象徴)と「王室」(権…

皇室問題について(1) ~「女系天皇」は有り得ない~

《秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となられたことを広く示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」の中心儀式「立皇嗣宣明の儀」が8日午前、皇居・宮殿で行われた…立皇嗣の礼は、憲法に基づく国事行為で、天皇の子でなく、弟が皇嗣として公にお披露目…

「きっこのメルマガ」を読む(3) ~「地球の裏側の国まで武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦する」という嘘~

《歴代の自民党政権の政府見解にも反しています。日本学術会議の会員の選出が選挙制から推薦制に変わった1983年、当時の中曽根康弘首相は5月12日の参議院の文教委員会で、次のように答弁しています。 「(学術会議の会員の選出は)学会や学術集団など…

「きっこのメルマガ」を読む(2) ~天皇が任命を拒否できないという嘘~

《菅首相が除外した6人は、「特定秘密保護法」や「共謀罪」や集団的自衛権の行使を可能にした「安全保障関連法」など、これまでの安倍政権が強行して来た「アメリカの子分として戦争に参加するための悪法」に強く反対している学者たちです。百歩ゆずって、…

「きっこのメルマガ」を読む(1) ~日本学術会議が憲法23条の「学問の自由」によって保障された政府の影響を受けない独立した組織という嘘~

今回はTwitterのフォロワー数が16万人という人気ブロガー「きっこ」のメルマガを読んでみたい。 《日本学術会議は、内閣総理大臣の管轄で国費で運営されていますが、憲法23条の「学問の自由」によって保障された「政府の影響を受けない独立した組織」で…

川辺川ダム論争について

《国が熊本県南部で計画を進めながら地元の反対などで白紙に戻った川辺川ダム建設を巡り、議論が再燃している。今年7月の豪雨で川辺川の本流である球磨川が氾濫したためだ》(10月8日付西日本新聞社説) 議論って何だ。折角の防災・減災を台無しにしてし…

大阪都構想再否決について(5) ~欠かせぬ既得権益の打破~

《10年にも及び、大阪市民を二分してきた論争にようやく終止符が打たれる。(中略)まず反対派との分断を修復し、幅広い理解を得ながら、真に大阪のためになる政策の実現に努めるべきだ》(11月3日付中國新聞社説) 大阪市民を二分してしまったのは、過…

大阪都構想再否決について(4) ~技術論一辺倒では変わらない~

《都構想はもともと大阪を成長させ、グローバルな大都市競争に打ち勝つことを主眼に置いていた。そのために大阪市を廃止して府と市の二重行政を解消し、成長に必要な権限と財源を府に集中させる狙いがあった》(11月2日付日本経済新聞社説) <グローバル…

大阪都構想再否決について(3) ~大改革よりも小改革の積み重ね~

私はまた先月のブログで、大阪が復興するためには、「大阪都構想」のように側(がわ)だけを変えても駄目であって、本質的には大阪に住む人たち自身が変わらなければならないと指摘した。 が、残念ながら反対派の側も「側」だけの議論に陥ってしまっている。…

大阪都構想再否決について(2) ~無責任な政治家達~

松井氏に続き、公明党府本部の佐藤茂樹代表が敗戦の弁を述べた。 佐藤「私もまずは、今回の住民投票で投票し、参加して頂いたことに御礼を申し上げたい。反対多数となったことを厳粛に受け止めてまいりたい。今回の都構想案は、しっかり公明党の主張が入った…

大阪都構想再否決について(1) ~政治とは固い板に穴をあけてゆく力強い緩慢な仕事~

私は先月のブログに「大阪市廃止」住民投票について書いた。 ​大阪市廃止住民投票について(1) ~大阪市廃止は単なるジリ貧~​(10月14日) ​大阪市廃止住民投票について(2) ~3S政策~​(10月15日) ​大阪市廃止住民投票について(3) ~漸…

バテレン追放令について(2) ~宣教師の衣の下に鉄砲を見た秀吉~

一方で、葦津珍彦(あしづ・うずひこ)説と軌を一にする記述も少なくない。例えば、中学歴史教科書にも次のような記述が見られる。 《キリスト教の布教を認めていた秀吉も,長崎の土地がキリシタン大名からイエズス会に寄進されていたことを知ると,1587(天…

バテレン追放令について(1) ~イエズス会は侵略者?~

先日、次のような記述を目にして驚いた。 《キリスト教を日本に初めて布教したザビエルは、まづ京都に行って皇室の諒解(りょうかい)をもとめたいと思った。だが戦国乱世のころで、ザビエルは日本の最高文化センターとしての皇室に連絡もできずに西国へ帰っ…