保守論客の独り言

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「きっこのメルマガ」を読む(2) ~天皇が任命を拒否できないという嘘~

菅首相が除外した6人は、「特定秘密保護法」や「共謀罪」や集団的自衛権の行使を可能にした「安全保障関連法」など、これまでの安倍政権が強行して来た「アメリカの子分として戦争に参加するための悪法」に強く反対している学者たちです。百歩ゆずって、何の関連もない6人が除外されたのであれば、それは「政治介入」とは言えないかもしれません。しかし、6人とも安倍政権下の悪法を批判して来た学者なのです。時の首相が自分の政権にとって都合の悪い学者を排除したという、これは上下左右どこからどう見ても、憲法違反の「政治介入」です》(きっこのメルマガ2020.10.08 MAG2NEWS)

 「違法の疑いがある」という人はいても、「憲法違反」と言い切る人はきっこ女史ぐらいであろう。ここで「違法」というのは「日本学術会議法」に反しているのではないかということ、それも総理の任命は形式的なものだとの国会答弁に基づく「法解釈」に関するものである。だから強く日本学術会議法に違反していると言えるようなものでもなく、疑いがあるとしているわけである。

《「形式的な任命権」の分かりやすい例を挙げると、総理大臣の任命も同じなのです。(中略)憲法第6条に基づき、任命権を持つ天皇より総理大臣を任命されて、これでようやく菅総裁は日本の総理大臣になれたのです。これも「形式的な任命権」ですから、天皇は「NO」と言うことはできません》(同)

 これも「嘘」である。天皇は慣例として任命しているだけであって、任命を拒否することは可能か不可能かと問われれば可能だと言うしかない。要は、憲法が、つまりはGHQが、天皇が任命を拒否することを想定していなかったということである。

 1969(昭和49)年3月14日の衆院内閣委員会で次のような遣り取りが交わされている。

○受田委員 憲法第7条には「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」と、「国民のために」こういうことが書いてあるわけですから、国民のためにならない国事行為は行なうことができないというまた裏の解釈ができるかどうかです。

○宇佐美説明員 内閣の助言と承認そのものが国民のためでなければならないというふうにも読めるわけでございます。内閣の助言と承認がある揚台にそれがはたして国民のためかどうかという御判断は、内閣が責任を持ってそういう立場で助言と承認をしておられるというふうに私どもは考えるほかはないと思います。

○受田委員 憲法の規定からは、天皇に対しては、内閣の助言と承認がありたる事項に関する拒否権は一切ない、こういうことですね。

○宇佐美説明員 一言にしていえばそういう関係であろうと思います。

○受田委員 たとえば、内閣の助言と承認の中に、著しく国民のためにならぬことを党派的根性からやる総理があらわれた場合に、これに対して陛下が御注意することができるのかどうかです。とんでもない総理が存在する場合に対する、その助言と承認を求めて陛下に御裁断を仰ぐ、憲法第7条の規定の中でそれに対して御注意はできるかどうか。ひとつお答え願いたい。(「それは仮定の問題だ」と呼ぶ者あり)

○宇佐美説明員 御注意という意味はちょっとむずかしくなりますが、御質問はできるだろうと私は思います。

○受田委員 仮定でなくして実際の問題で、つまり質問をしてこれでよろしいかと念を押される。そこを私は、ある程度陛下のそういう良心に違うような助言と承認事項を携えて憲法第7条の国事行為を行なってほしいという要請のありたる場合に、陛下の御質問またはこれでよいかと念を押される、このくらいはやはりやられてしかるべきではないか。

 憲法に明記されていないから<拒否権>はない。が、<拒否権>という「権利」がなくとも「拒否」することが否定されているわけでもない。否、そもそも天皇憲法の対象の外にある「飛び地」であり、天皇に「人権」があるのかと同様、軽々に語ることは出来ないのである。【続】