保守論客の独り言

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「きっこのメルマガ」を読む(3) ~「地球の裏側の国まで武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦する」という嘘~

《歴代の自民党政権の政府見解にも反しています。日本学術会議の会員の選出が選挙制から推薦制に変わった1983年、当時の中曽根康弘首相は5月12日の参議院の文教委員会で、次のように答弁しています。

「(学術会議の会員の選出は)学会や学術集団などの推薦に基づいて行われるので、政府が行なうのは形式的任命に過ぎません。実態は各学会や学術集団が推薦権を握っており、政府の任命はあくまでも形式な(ママ)ものです。そのため、学問の自由独立は保障されているものと考えております」

また、当時の中曽根内閣の丹羽兵助総務長官も「学会から推薦したいただいた(ママ)者は拒否しません」と断言しています》(きっこのメルマガ2020.10.08 MAG2NEWS)

 37年も経てば時代も変われば人も変わってしまっている。前提条件が大きく異なっているのに未だにこんな「口約束」を大上段に振りかざして一体何になるのだろうか。

《何の手続きも踏まずに、その法律の条文の解釈を自分勝手に変更することで、それまでとは別の法律にしてしまう。これは卑怯で卑劣、民主主義を根底から否定する反則です》(同)

 本当に重要なことなら口約束ではなく条文に書き起こし固定化しておくべきで、それをせず「こう言ってたではないか」などと昔話を持ち出すのは法治主義的ではない。

 憲法9条も同じ構造にある。条文を素直に読めば自衛隊違憲存在であろう。それを解釈改憲によって自衛隊保有しているのであるが、安倍前政権がこの違憲状態を解消しようと憲法を改正して9条に自衛隊保有を追記しようとしたのは逆に許さない。

安倍晋三氏という人物は、皆さんご存知のように、ルール違反が大好きです。その最たるものが、2014年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権の行使容認のための憲法の解釈変更」、つまり「解釈改憲」です。たとえば、白かったものを薄い灰色に変えるくらいなら「解釈変更」で済む場合もあります。しかし、地球の裏側の国まで武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦することを「自衛の範囲」とする「解釈変更」などありえません。これは、真っ白だったものを真っ黒に塗り替える内容変更ですから、「解釈改憲」ではなく、正式に「憲法改正」の手続きを踏まなくてはなりません》(同)

 これも嘘。<地球の裏側の国まで武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦する>などということは言っていない。発動のためには3つの要件が必要とされる。

1、我が国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が発生すること

2、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があること

3、その国の明示の要請または同意を得ること

 そもそも安倍前政権が半ば強硬的に集団的自衛権行使容認に踏み切ったのは、米国が北朝鮮攻撃に踏み切る可能性が高まったからである。北朝鮮問題は米国よりもむしろ日本の方が影響が大きい。にもかかわらず、国内事情から集団的自衛権行使は行えないなどと言えたはずもない。

 が、半ば緊急的に集団的自衛権行使を内閣が容認したとしても、これは大きな解釈改憲となるので、きっこ女史も言うように<正式に「憲法改正」の手続きを踏まなくてはな>らない。それを怠った安倍政権も問題だが、それを追及せず、「モリカケ桜」で得点稼ぎをしようとしていた野党にも同等の責任があるのではないか。【了】