保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

戦後80年の首相所感について(4)所感は相手国が見えない戦争分析

「陸軍と海軍とが互いの組織の論理を最優先として対立し、それぞれの内部においてすら、軍令と軍政とが連携を欠き、国家としての意思を一元化できないままに、国全体が戦争に導かれていった歴史を教訓としなければなりません」

 石破首相は、さらっとこのように言っているが、注意すべきは、このように陸軍と海軍がいがみ合っていたという点である。軍としての一体性はなく、軍として暴走しようにも出来なかったということを押さえておく必要がある。つまり、しばしば自虐史観が言うように、軍部が暴走し戦争へと雪崩れ込んだなどというようなことはなかったということだ。実際当時は、陸軍と海軍が対立し、さらに政治が加わって三竦(さんすく)みの状態にあって、何事も決められない状況にあり、日本が侵略戦争をふっかけたというような話ではなく、現実は戦争へと追い込まれていったということだ。

 陸軍と海軍のいがみ合いは、大東亜戦争という名の亜細亜と太平洋の二正面作戦を敷くというあってはならないことを引き起こした。石油を確保するだけなら真珠湾攻撃など必要なかった。米国を相手にせず、石油を確保し、亜細亜の植民地解放を目指せばよかったのだ。にもかかわらず、どうして対米戦争にまで手を広げたのか。真珠湾攻撃は海軍によるものである。また、真珠湾攻撃は徹底したものではなく、なぜか途中で引き返すといった手加減した攻撃だった。つまり、海軍の動きがおかしいのだ。おそらく海軍深くにスパイが入り込んでいたということではないかと私はにらんでいる。

 米英は日本を戦争へと巻き込んで、孤立主義にあった米国が戦争に踏み切る口実を作りたかった。だから、実際は日本の情報は筒抜けであったが、宣戦布告なく真珠湾を騙し討ちしたかのように言いつのって、米国民を戦争へと駆り立てたのである。また、ソ連もドイツと日本に挟撃されては困るので、コミンテルンのスパイのゾルゲや尾崎秀実(ほつみ)を使って、日本に南進政策をとらせた。さらに、もっと大きな視点で見れば、「敗戦革命論」よろしく資本主義国を同士討ちさせて疲弊させ、漁夫の利を得ようとしたのである。

 以上のような私の見立てがどれほど説得的であるかどうかかはさておき、私が所感ならびに自虐史観に不満なのは、戦争には相手が必要であるにもかかわらず、日本を取り巻く環境の分析がほとんどなされていないことである。だから、日本がいかに無謀な戦争を行ったのかということにしか興味がなく、日本は国力差が歴然としていて、決してやりたくない戦争に引き込まれたというような分析がほとんど見られないということだ。【続】