保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

経済音痴の日経社説

日本経済新聞は、一般紙とは異なった視点を提供してくれると思っている向きもおそらく少なくないのだろう。が、私の目には度々それが「おかしなもの」に映ってしまうのである。例えば、コロナ禍の今、財政再建の必要を前面に出すようなところである。

少子高齢化の進展にコロナ下の財政出動が追い打ちをかけ、政府の債務は膨らみ続ける。いずれ財政再建の道筋を示す必要もあろう。消費税率の引き上げを含む抜本税制改革の想をいまから練り、来るべき時に備えるのも、与党の責務である》(12月11日付日本経済新聞社説)

 本来財政は均衡しなければならないが、やむを得ず一時的に債務超過となる場合もあると考える「財政ハト派」の言い分である。

 が、債務の大きさを単式簿記的に問題視するのは財務の素人と言うしかない。まして、近年MMT(現代貨幣理論)が指摘するように、金本位制ではない今、貨幣の発行を即<債務>と見做すのは短絡的に過ぎる。

 こういった「財政ハト派」も、過度なインフレが生じない限り財政赤字は問題なしとする「財政フクロウ派」もどちらも唯我独尊であって、いつまで経っても議論は平行線ではないかと達観する向きもあるだろう。

 が、コロナ禍で事情は違ってきているのではあろうが、コロナ禍以前は必要十分な資産があり、複式簿記的に見れば、日本は決して債務大国と呼ばれるような状況にはなかった。財務省の思惑のみならず国際的な情報戦の存在も疑ってみる必要もあろう。

税制改正大綱の柱の一つは、当面の景気対策である。住宅ローン減税の特例措置や車検時のエコカー減税を延長し、地価の上昇が見込まれる住宅地や商業地などの固定資産税を据え置く。

コロナ禍で収入が減った人々や、消費を控える人々への配慮は欠かせない。ここで一定の負担軽減策を講じるのは理解できる》(同)

 私には理解できない。どうしてこのような相も変わらぬ住宅や車といったものに偏った依怙贔屓(えこひいき)を<景気対策>と呼べようか。

《もう一つの柱は、コロナ後の成長強化や構造転換に資する減税だ。脱炭素化やデジタル化の投資を刺激する税額控除、中小企業のM&A(合併・買収)を促進する新税制などが目玉である。

こうした施策が重要なのは言うまでもない。減税措置の効果を十分に引き出し、経済の活性化や生産性の向上につなげたい》(同)

 <こうした施策が重要>だなどと私は寸毫(すんごう)も思わない。<脱炭素化>って何のことだ。地球温暖化対策などという「カルト」活動に巻き込まないで欲しい。要は、<脱炭素化>によって一儲け企んでいる人達を贔屓しようということに過ぎない。

 <脱炭素化>、<デジタル化>がどうして<成長強化>や<構造転換>になるのかさっぱり分からない。そもそも日本はどういう成長戦略を持っているのか。それなしに<成長強化>など有り得ない。<構造転換>にしても先に何某(なにがし)かの将来像があってのものであり、<脱炭素化>、<デジタル化>によってまだ見ぬ新たな構造が生み出されるなどという夢物語にはならないのである。

 目先の利益を追い掛けるかのような何とも薄っぺらな表層的政策は、いずれ暗礁に乗り上げるのが落ちであろう。