保守論客の独り言

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自民党総裁選:経済政策

19日朝のNHKのテレビ番組『日曜討論』に自民党総裁選候補が出演し論戦を交わした。

河野太郎氏:「アベノミクスで企業の利益は非常に大きくなったが、個人の所得につながってこなかったところがある。賃金を上げることによって、所得を増やす。そのためには、労働分配率を高めた企業には、法人税を減税する。これを速やかに始めていきたい」(NHK NEWSWEB2021919 1148分)

 これは一国の「経済政策」ではない。おそらく河野氏は経済の全体像が把握できていないのだろう。

 成程、アベノミクス第1の矢「金融緩和」によって、円安となり株価が上昇した。結果、企業の業績は回復し、有効求人倍率が上がり、失業率も下がった。が、問題は、これらは企業の「新機軸」によってもたらされたものではないということである。つまり、企業の競争力が高まって景気が回復したわけではないということである。今後企業は純粋な技術力で国際競争に打ち勝つことが出来るのか、そのことが問われているのだと思われる。

岸田文雄氏:「利益や効率だけではない新しい日本型の資本主義を進めたい。子どもの貧困など、格差が広がったと言われてきたが、新型コロナがそれに追い打ちをかけた。成長の果実をしっかり分配し、広く所得を引き上げていくことを考えていかなければならない」(同)

 言っていることは「社会主義」「福祉主義」である。岸田氏が左翼政策を採りたいのであれば、やはり「自由主義」の立場に立つ人達と袂(たもと)を分かつべきなのではないか。「自由主義」と「社会主義」「福祉主義」の人間が1つの政党に混在し、与党であり続けるのは選挙を無効にしてしまっている。自民党は、「自由主義」か「社会主義」「福祉主義」かを有権者に選択してもらうことから逃げるべきではない。

高市早苗女史:「いちばん重視しているのは、未来をひらいていくために、リスクの最小化に資する危機管理の分野に対し、国費で大胆な投資を行い、産業や製品、サービスを育てることだ。それを同じような課題を抱える世界各国に輸出していくことでそのまま成長投資になる姿を描いている」(同)

 おそらくNHKは高市女史を貶(おとし)めたいのであろう。次のように書く産經新聞とは随分印象が違う。

《日本経済の強靱(きょうじん)化を目指す「サナエノミクス」を掲げる高市氏はアベノミクスの深掘りを主張する。金融緩和に加え、大胆で機動的な財政出動の必要性を訴え、新型コロナ対策などを念頭に「危機管理、つまりリスクの最小化に資する分野に対して国費で大胆な投資を行う」》(産経ニュース2021/9/19 20:31

 最大の論点は、高市女史がインフレ率が2%になるまで基礎的財政収支primary balance)を凍結すると言っていることである。借金が増えることを怖れて財布の紐を締めれば必要な公共投資が行えない。河野氏に至っては消費増税すら示唆しており話に成らない。

 蛇足ではあるが、アベノミクス、サナエノミクス、それぞれに私は批判を加えてきたが、河野、岸田両氏の議論とは次元の異なる話であるということを断っておきたい。