菅首相の所信表明は、残念ながら私には薄っぺらに思われた。
もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。
積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。
どういう<産業構造>を目指すのかという見通しもなく、温暖化対策を行えば<産業構造>が変革される、そしてどのような<産業構造>となるのかは出来てからのお楽しみではあまりにも無責任である。
どうして<積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる>のか、大まかにであれその道筋を示さなければ、企業活動は暗中模索の状態となり、日本経済は推進力を失ってしまうであろう。
鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。
答えがこれではお寒い限りである。
省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。
長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。
再生可能エネルギーを最大限導入し、原子力政策を進めれば、安定的なエネルギー供給が確立できるってどういうことなのか。それはこれまで言われてきた<エネルギーミックス>と何がどう違うのか。正直、肝心なことが抜け落ち過ぎている。
蛇足のように<石炭火力発電>について触れられている。が、<石炭火力発電>政策を<抜本的に転換>するとはどういうことなのか。
教育は国の礎です。
と言う菅首相の回答が、
すべての小中学生に対して、1人1台のIT端末の導入を進め、あらゆる子どもたちに、オンライン教育を拡大し、デジタル社会にふさわしい新しい学びを実現します。
とは。教育に関心がないのだろうが、これほど中身のない話もない。
昨年の大学入試改革における混乱にも見られたように、教育が実用重視に偏り過ぎているのではないかという危惧がある。英語を話す必要のない日本でどうして英会話力を付けなければならないのか。読み書き計算が重要な小学生にどうしてプログラミングなどという科目が必要なのか。教養があまりにも軽視されてはいないか。
役所に行かずともあらゆる手続ができる。
地方に暮らしていてもテレワークで都会と同じ仕事ができる。
都会と同様の医療や教育が受けられる。
こうした社会を実現します。
コロナ禍下において<テレワーク>は重要なのだろう。が、社会が本当に求めていることはそういったことではないのではないか。例えば私なら、「頑張ったものが報われる社会」をいかに構築するのかというのが1つの目標となる。「遣り甲斐」「生き甲斐」といったものを持つことが出来る社会作りが大切だと思っている。翻って菅首相の答えはといえば、
そのため、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めます。
である。これで大丈夫かというのが私の感想である。【了】