保守論客の独り言

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地球温暖化防止政策「グリーン・リカバリー」について(2) ~グリーン・リカバリーという儲け話~

小泉進次郎環境相は10日、気候変動対策の官民組織「気候変動イニシアティブ(JCI)」と新型コロナウイルスが収束した後の経済回復について意見交換した。脱炭素社会を目指し、環境と調和した経済復興「緑の回復」(グリーン・リカバリー)が重要との認識を共有した。ESG投資や再生可能エネルギーの拡大が今後の課題となる》(日本経済新聞 2020/6/10 18:29)

(注)ESG投資:従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資。

 気候変動対策の官民組織とはいかにも胡散臭いが、要は、新しい儲け話を環境相に進言したということである。

「日本が脱炭素化を先導していくためには政府の支援が重要であり、グリーンリカバリーを進める上でその流れを作ってほしい」(末吉竹二郎JCI代表)(alterna 6/16(火) 13:42配信)
「小売業において再生可能エネルギーの確保が難しい」「国のリーダーシップ、後押しがほしい」(イオンの三宅香執行役)(日刊工業新聞2020年6月12日)

 
とはつまり、グリーン・リカバリー政策に予算を付けてくれということに他ならない。

《コロナ禍で、効率と利益を過剰に求めるグローバル経済の弊害が浮き彫りになった。旧来の常識が問い直されている今は、世界を変えるような大変革が生まれる好機ともいえる》(5月31日付毎日新聞社説)

 シュンペーターは「創造的破壊」と言ったが、その意味は既存のものを「破壊」すれば何か新しい良きものが「創造」されるということではない。

《通常新しいものは旧いものの中から発生するのではなく、むしろ旧いものと並んで登場し、これを打ち負かし、あらゆる関係を変化させ、その結果、ひとつの特殊な「秩序化の過程」が必要になるという事実を考慮しなければならない》(シュンペーター『経済発展の理論(下)』(岩波文庫)、p. 192)

《温暖化防止に資する発想や技術を支援し、新たな雇用や市場を創出することは合理的、倫理的で、世界の要請にもかなうだろう》(同、毎日社説)

 温暖化防止に資するとの「妄想」を支援しても合理的でもなければ倫理的でもない。産業革命以降、CO2の排出量が増加し、地球が温暖化し危機的状況にあるという<旧来の常識>こそ問い直されるべきではないか。

《石炭火力から撤退する方針を決め、国内外の新規の計画を凍結する。将来の脱原発に向けて原子力の比率を抑え、再生可能エネルギーを思い切って拡大する――。政治の主導で、政策を大胆に転換するべきだ》(6月16日付朝日新聞社説)

 おそらくは脱原発を夢みるためにこのように言うのであろうが、原子力技術が高度化しない限り、これまで排出された核廃棄物の処理はままならないし、耐用年数を越えた原発廃炉も進められない。

 原子力の問題は原子力技術を高度化することによってしか克服できないと私は考えるが、脱原発派はそのあたりどのように考えているのであろうか。【了】