保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

こんな大変な時に温室効果ガス削減だなんて(3) ~温室効果ガス排出量と経済は比例する~

《温暖化ガスの大幅削減は容易ではない。原子力発電所の再稼働が進まず、石炭火力への依存をなかなか減らせないのが大きな原因だ。再生可能エネルギーの利用を増やす工夫が欠かせない。

地産地消ができる分散型電源や、IT(情報技術)を駆使して電力需給の変動を吸収できるシステムの普及、水素エネルギーの活用など方法はいろいろある。二酸化炭素を資源として使う試みも始まっている。産官学の知恵と技術を結集して進めるべきだ》(411日付日本経済新聞社説)

 日経社説子は<方法はいろいろある>という。が、果たして「現実的かつ有効な方法」はどれくらいあるというのだろうか。それどころか<水素エネルギーの活用>には日経自ら疑問符を付けている。

《水素は天然ガスや石油など化石燃料を改質して製造するのが一般的だ。資源国で化石燃料を採掘する時に加え、製造する時にもCO2が排出される。化石燃料のまま従来通り利用する場合と比べて、ライフサイクル全体でCO2排出増につながっていないか。気候変動の国際交渉で議論されているように50年に世界で50%もの温暖化ガスを削減する場合は、製造時も含めてCO2排出量を抑える必要がある》(日本経済新聞2014/1/25 7:00

13年度以降、日本の温暖化ガス排出量は減少している。経済の停滞が一因とみられる。新型コロナウイルスの感染拡大で、20年度も減る公算が大きい。

感染が収束し経済が回復しても排出を増やさないことが肝要だ》(411日付日本経済新聞社説)

 温室効果ガスの排出量を減らす手っ取り早い方法は、生活水準を下げることである。経済が停滞すれば排出量も減る。経済と排出量は比例関係にあるということである。<経済が回復しても排出を増やさない>などというのは虫の良い話でしかない。

《経済成長を続ければ、CO2が増える…CO2を減らすには景気を悪くしなければならない。失業者を出さなければならない。

(中略)

省エネルギー化、効率化によって、ある程度はCO2を削減することはできる。しかし、それをやり終えた後、さらにCO2を削減しようと考えれば、経済成長を止めるか、すべてのエネルギーを原子力発電に切り替えるか、全く新しい技術が生まれるか、という選択肢しかない》(武田邦彦『「CO225%削減」で日本人の年収は半減する』(産經新聞出版)、pp. 77-78

 が、武田氏は新しい技術開発に懐疑的である。

《誤った目標に向かって技術開発で成功した例は歴史的にない…新技術は「正しい未来」に向かった場合、もっとよくしようと技術者が一所懸命になって生まれてくるもので、「定かではない未来」「間違った未来」に向かっては研究開発のエネルギーは生まれてこないのである。さらに言えば、官主導の技術開発で成功したものなどない》(同、p. 78【了】