保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

施政方針演説について(1) ~長期政権に代わる受け皿の無い悲劇~

通常国会が開会され、安倍晋三首相は令和初の施政方針演説を行った。とはいえ、2012年に政権を取り戻してから8回目の施政方針演説となる。例によって、「地方創生」「アベノミクス」「1億総活躍社会」「全世代型社会保障」「積極的平和主義」等々と看板政策が並ぶ。が、いささかマンネリ気味である。

「日本はもう成長できない」。7年前、この「諦めの壁」に対して、私たちはまず、3本の矢を力強く放ちました。その果実を活かし、子育て支援、教育無償化、更には働き方改革。一億総活躍社会を目指し、まっすぐに進んでまいりました。

 厳しさを増す安全保障環境を直視しながら、平和安全法制を整備し、防衛力を抜本的に強化しました。地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で、世界を駆け回り、ダイナミックな日本外交を展開してきました。

 我が国は、もはや、かつての日本ではありません。「諦めの壁」は、完全に打ち破ることができた。その自信と誇りと共に、今、ここから、日本の令和の新しい時代を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか」

 私の見立ては安倍首相とは正反対のようである。日本の成長の芽を摘んでしまった。それがアベノミクスではなかったか。否、そもそもアベノミクスなど固有名詞化して呼ぶような政策ではない。ただ大胆に金融緩和を行っただけである。

 金融を大幅に緩和することによって円安となり、その結果株高となって、これが評価されているということだがとんでもない。円安とは国富の縮小であり、1ドル80円から120円の円安となることで、国富は3分の2に収縮してしまった。

 有効求人倍率が上がり好景気であるかのような話も聞かれるが、実態は低賃金労働者が不足しているに過ぎない。だから高齢者や女性に働くことを促し、さらには外国人労働者を増やそうとしているのである。

 日本はこれまでの「ものづくり」から「かちづくり」へと産業転換を図るべきであるというのが私の主張であるが、アベノミクスの円安政策はこれと逆行する政策である。アベノミクスは、失業者が増加することを怖れ、最早斜陽産業と化しつつあるこれまで日本を牽引してきた産業を温存することを優先した。そのためAIの導入が遅れ、円高の強みを生かした投資戦略も困難となってしまった。

 問題は、アベノミクスの失政を論理的に指摘する人がいないことである。ただ感情的に安倍政権を批判する人たちはいる。が、それは安倍政権に取って代わる「受け皿」とはなり得ない。【続】