保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

自民党総裁選、視野狭窄の「識者」(2) ~急いては事を仕損じる~

竹中平蔵総務相は、菅義偉首相が自民党総裁選不出馬となった理由が2つあると言う。

《第1は医療に関する鉄のトライアングル、いわゆる「厚生ムラ」を崩せなかったことにある。医師会、厚生労働省、政治的ポジションを与えられた専門家らによる政府の分科会のことだ。

新型コロナで医療体制が逼迫(ひっぱく)したのは多数の病床を有しながらそれが活用されない医療の硬直性が原因で、その背後には厚生ムラによる独占体質がある。このムラを解体するには日本版CDC疾病対策センター)の設置が必要となる》(日本経済新聞2021年9月7日 2:00)

 「厚生ムラ」が問題であることはおそらくそういうことなのだろうと推測される。が、日本版CDCを設けることでこのムラを解体すべきかどうかについてはもう少し議論が必要なのではないか。小泉政権時代から同じであるが、竹中氏は物事を単純に考え過ぎる嫌いがある。性急な変革は、たとえそれがどれほど優れた施策に思われようとも、想定外の事態を招き、新たな混沌を招きかねないのである。

《第2はネット世論に対応できなかったことだ。新型コロナの行動制限による鬱憤が政権批判に向き、ネットで拡散されて支持率が下がるという現象が起きた。

これは次の総裁も悩まされるだろう。国民に直接語りかけて協力を得るカリスマ性が今の民主主義政治には求められる》(同)

 <カリスマ性>が問われるというのはその通りだと思うけれども、多くの場合、それは「無いもの強請(ねだ)り」にしかならないのではないか。また、あまり<カリスマ性>だけに力点を置きすぎるのも、ヒトラーのような人物を招きかねないから注意が必要である。

《今回の総裁選にはもう一つの論点がある。エネルギー、とりわけ原子力発電所の問題だ。

経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を決める際、自民党内で原発の更新投資を主張する一部の保守派の主張を、首相に近い若手議員が抑えた経緯があった。

脱炭素を目標に掲げた後の総裁選として原発の問題も議論すべきではないか》(同)

 竹中氏はツイッターで「脱原発」の立場を鮮明にされている。

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 では竹中氏は、何をどのように議論することを期待されているのであろうか。国際公約「46%脱炭素」を実現しようとすれば、原発稼働は必須であろう。「脱原発」と「脱炭素」を一度に実現しようとすれば、再生可能エネルギーの比率を一気に高めなければならなくなる。が、太陽光発電を増やそうとすれば、更なる森林破壊を生み、土石流災害の危険性を高めることになってしまう。

 この板挟みから脱出するためには、「46%脱炭素」を見直すか黙殺するしかない。勿論、それだけでは国際世論が黙ってはいないだろうから、根本問題に切り込めばよい。世界最大の二酸化炭素排出国シナに排出削減を要請するのである。その際、日本が排出削減の手助けをすればよい。その方が遥かに実効的であり現実的ではないか。【了】