保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

大飯原発許可取り消しについて(1) ~分を弁えない素人達~

原発稼働を巡る判決が出るたびに同じことを言い続けているので食傷気味と言わざるを得ないけれども、各紙社説が挙(こぞ)って取り上げている以上これを看過するのもどうかと思うので、今回も懲りずにこの問題を取り上げてみたい。

関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、住民らが国に原発設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は原子力規制委員会の判断は誤りだとして許可を取り消した。

 東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ原発の新規制基準が策定されて以降、運転差し止めを命じた司法判断はあったが、許可自体を取り消す判決は初めてだ》(12月6日付南日本新聞社説)

 この判決への各紙社説の反応を見ておこう。まずは「重く受け止めるべき」派である。

国と電力会社は重く受け止める必要がある。(12月4日付日本経済新聞社説)

規制委は重く受け止めるべきだ。(12月5日付毎日新聞社説)

規制委は判決を重く受け止め、安全性の審査を検証すべきである。(12月6日付南日本新聞社説)

 次は、「原子力政策を揺るがす」派である。

形式上審査に合格さえすれば、原発再稼働の安全性は保証されるという、国の原子力政策を根本から揺るがす判決だ。(12月5日付北海道新聞社説)

国の原子力政策を根元から揺るがす判決だ。(12月7日付東京新聞社説)

 原発推進派の意見もみておこう。

リスクを過度に評価すれば、あらゆることは立ちゆかなくなる。判決は結論ありきで、審査の実務を軽視した印象が拭えない。(12月8日付読売新聞社説)

 さて、私がいつも気になるのは、原子力における素人がその道の玄人に口出ししていることである。

 原子力規制委員会という玄人の判断を誤りだとして素人住民が訴訟を起こす。それを素人の裁判官が玄人の規制委は誤りだと判決を下す。そして、司法判断の都合の良い部分だけ切り取って素人の社説子が鬼の首でもとったかのように勝鬨(かちどき)を上げる。いつまでこんな茶番をやり続けるというのだろうか。

《そもそも電力会社が算定し、政府の規制組織が「お墨付き」を与える基準地震動は、どれほど信頼できるのか。というのも2007年の新潟県中越沖地震で、東電柏崎刈羽原発を襲った揺れは、想定されていた基準地震動を大きく上回ったからだ。地震後、東電は最大2280ガルまで従来の5倍に引き上げた。

 柏崎刈羽原発だけではない。東北電力女川原発宮城県)と北陸電力志賀原発(石川県)も想定を超す揺れに見舞われたことがある。発生後に「想定外」と弁解しても遅すぎるし、許されまい。規制委は、耐震性について最初から相当厳しいハードルを課すべきではないか》(12月6日付中國新聞社説)

 どれだけ<厳しいハードルを課すべき>かはまさに政治領域に属することであり、司法が白黒付けるべき話ではない。国会が機能しないからといって、司法に寄り掛かるのは「三権分立」に悖(もと)ると言うべきではないか。【続】