保守論客の独り言

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経団連の原発提言について(2) ~黒い噂~

経団連が、電力システムに関する提言をまとめた。火力発電所に依存する現在の電源構成に警鐘を鳴らし、遅れが目立つ原子力発電所の再稼働を推進するよう求めた。

 また、原発の技術開発や継続的な投資を促すため、原発の建て替え(リプレース)や新増設を国の政策として明確に位置づけるべきだと指摘した》(410日付産經新聞主張)

 が、このように言うのは我田引水ではないかという黒い噂もある。

《提言を主導したのは原発メーカー、日立製作所出身の中西宏明会長だ。中西氏は「再稼働をどんどんやるべきだ」と発言し、原発と原爆が混同されて再稼働が進まないとの認識を示したこともある。

 日立は英国の原発建設計画を凍結したばかりで、原発ビジネスの行き詰まりを中西氏は分かっているはずだ。経団連会長の立場を利用して原発産業を守ろうとしているとの疑念も招きかねない》(411日付北海道新聞社説)

 問題は提言の根拠というか中身である。

東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を受け、全国で原発が相次いで運転を停止した。その後、原子力規制委員会による新規制基準が策定されたが、安全審査の遅れなどにより、これまで再稼働した原発は全国で9基にとどまっている。

 再稼働の遅れで、火力発電に対する依存度は8割に高まった。震災前から大きく上昇しており、温室効果ガス排出を削減する世界的な潮流に逆行している。石炭火力も環境問題を背景に銀行が融資に慎重姿勢をみせており、新設計画が相次ぎ撤回された》(同、産經主張)

 <温室効果ガス排出を削減する世界的な潮流>を盾に原発再稼働を言うのは卑怯である。温室効果ガスなるものは、言うまでもなく地球温暖化仮説の根本であるが、これはあくまでも仮説であって、日頃はこの仮説に反対する記事も掲載しつつ、この仮説を妄信(もうしん)してみせるのではご都合主義と言われても仕方がない。

経団連の提言は厳しい電力事情を憂慮したものだ。原発や石炭火力などの基幹電源に対する投資の縮小が今後も続けば、安定電源の確保は難しくなる。原発の新増設を含め、政府に電源投資を促すように求めたのもこのためだ。

 温室ガスを排出しない太陽光などの再生エネも普及しつつあるが、その発電量は不安定で、コストも割高である。また、各地域に分散立地されており、再生エネによる電力を需要地に供給する送配電網の整備も課題である。電力市場に参入した新電力を含め、広く負担する仕組みを考えたい》(同)

 <太陽光などの再生エネルギー>は<基幹電源>となり得ない。太陽光発電は、買取価格を高く設定し、その負担を消費者の電力料金に上乗せすることでこれまで成り立ってきたが、費用対効果から、今後買取価格が世界の水準にまで下げられれば、おそらく下火になるにちがいない。したがって、太陽光発電はやはり補助的なものと考えざるを得ない。

 だとすれば、原発を稼働させながら核技術の向上を図るしかないではないか。【了】