保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

憲法

憲法9条を巡って(1) ~井上達夫 vs. 長谷部恭男~

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。― 〇 ― さて、新年最初の題目は「憲法9条」である。私はこれまで何度も「9条」について自説を述べてきた。そのことを知っている人であれば、今更感があるだろうが、今回は井上達夫、長…

歴代最長安倍政権について(2) ~集団的自衛権行使容認は違憲~

《これほどまでに日本国憲法をないがしろにした政権は、過去に例がなかろう。歴代内閣が維持してきた憲法解釈を一方的に変更して、集団的自衛権の一部行使に道を開いた》(11月20日朝日新聞社説) 例によって、同様の批判が幾つか見られる。 《安倍政権は、…

川崎ヘイト条例について(3) ~<ヘイト>と<表現の自由>の線引きは不可能~

《今も続く差別的な街頭宣伝に恐怖や苦痛を感じている住民がいる。ネット上でのヘイト被害も深刻となっている。その現実のもとに今回の条例は成立に至った。一方で、憲法の表現の自由との兼ね合いで、懸念の声もある》(12月13日付東京新聞社説) 問題は、<…

核抑止論について(2) ~核抑止論と力の均衡論~

《日本政府には、広島、長崎のような悲劇や核兵器使用の脅しから国民を守る責務がある。だから通常兵力と並んで核抑止力も日本の守りに加える政策を長らく採ってきた。この核抑止力は自前で用意せず、日米同盟に基づき米軍の核戦力つまり米国の「核の傘」を…

ローマ教皇を政治利用する政教分離論者(1) ~言うは易く行うは難し~

日頃、靖国神社参拝の問題となると「政教分離」をうるさく言う人達が、核廃絶に関してはローマ教皇を政治利用する。まさに「二重基準」(double standard)である。 《13億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇が長崎と広島…

即位の礼について(5) ~過去を軽んずることは、自らを軽んずること~

《政教分離の原則は、宗教戦争に明け暮れた欧州の悲惨な歴史を踏まえ、政治権力と宗教の分離を求めるものだ。権威を帯びても権力を振るわず、宗教団体を持たれない天皇の祭祀、儀式に杓子(しゃくし)定規に当てはめては、天皇を戴(いただ)く憲法の精神に…

即位の礼について(4) ~憲法と皇室伝統は矛盾する~

《平成の御代(みよ)替わりをおおむね踏襲した今回の即位の礼に対して、一部から、現憲法に反するとの指摘が出ている。もっと素直にお祝いできないものか》(10月22日付産經新聞主張) 思わず心の声が出たのかもしれないが、皇室の伝統的儀式と現行憲法が矛…

即位の礼について(3) ~憲法と皇室の矛盾~

《天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿(せいでん)の儀」が、皇居・宮殿で行われた。一連の皇位継承の中心をなす伝統儀式が挙行されたことを心よりお祝いしたい》(10月23日付読売新聞社説) 陛下が即位を宣言されたことがお目出度いのであって、<…

即位の礼について(2) ~「憲法下の象徴像」って何なのだ?~

《政府は「前回検討済み」として、見直しを拒んだ。前回の式典のあり方に対し、大阪高裁から疑義が表明された経緯などには目を向けず、天皇の権威を高めるために明治になって作られた形式にこだわった。 平成流と呼ばれた上皇ご夫妻の活動を通じて、「国民に…

即位の礼について(1) ~政教分離を言い募る「倒錯趣味」~

《天皇陛下が即位を内外に宣言する「即位礼正殿(せいでん)の儀」が、きのう皇居で行われた。 陛下のおことばは、憲法にのっとり、国民統合の象徴としての務めを果たすと誓うもので、昭和から平成になった際に上皇さまが述べたものとほぼ重なる内容だった。…

閣僚の靖国神社参拝について(3) ~津地鎮祭最高裁判決~

津地鎮祭判決は次のようなものであった。 《最高裁(8名の裁判官の多数意見)は、政教分離原則をゆるやかに解しつつ、目的・効果基準を用い、憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」とは、宗教とのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし信…

閣僚の靖国神社参拝について(2) ~「政教分離」という言葉は憲法にない~

《首相や閣僚による靖国参拝は、憲法が定める政教分離の原則からみても疑義がある。衛藤、高市両氏とも「私人として」というが、閣僚という立場で公私は分かちがたい》(10月19日付朝日新聞社説) そもそも日本国憲法には「政教分離」という言葉は出て来ない…

日本国憲法第9条2項は主権放棄条項だ(2) ~「力の均衡」が大前提~

《これ(=憲法9条)によって国際平和が実現できるのかといえば、むしろその正反対なのです。国際平和というものは基本的に主権国家が集まって互いの持つ「最高の力」を均衡させておくことで保たれています。その中に突如として戦力ゼロの軍事的空白地帯が出…

日本国憲法第9条2項は主権放棄条項だ(1) ~9条2項を削除するのは主権国家として当然だ~

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しな…

戦後日本を強化する憲法改正論について(4) ~「後法優先の原則」~

《九条に自衛隊の存在を明記すれば、戦後日本の平和主義は変質する恐れがある。(中略) 自民党案では、九条には国と国民を守るため「必要な自衛の措置をとる」として「自衛隊を保持する」との条文を加える。「自衛の措置」の明文化は、集団的自衛権の行使を…

幼稚な憲法議論を駁(ばく)す(4) ~近視眼的憲法観~

《憲法を子どもにも分かるやさしい表現で伝えよう。そんな試みが広がっています。 憲法=檻(おり)、権力=ライオンに例えた解説書「檻の中のライオン」(かもがわ出版)は、2016年の発行から増刷を重ね、すでに13刷、約2万部に達しました。出版社によると…

幼稚な憲法議論を駁(ばく)す(3) ~護憲派の欺瞞~

《国の最高法規である憲法に求められるのは安定性である。 制定から時間を経て実態に合わない点が生じた場合でも、関連法の整備や憲法解釈の運用で対応することもできよう。 改憲が必要となった場合でも、憲法の普遍的価値である基本的人権の尊重、国民主権…

幼稚な憲法議論を駁(ばく)す(2) ~憲法と自衛隊存在の齟齬(そご)~

《憲法というと、戦争放棄を定めた9条が議題になることが多く、「集団的自衛権とは何か」など日常生活とは縁のない小難しい論争ばかりという印象がある。 先日、同性婚を法的に認めるよう求める裁判が提訴された。憲法24条は「婚姻は両性の合意のみ」で成立…

幼稚な憲法議論を駁(ばく)す(1) ~日本国憲法は革命不発の残滓~

《新時代を迎え、これからの憲法論議にどう取り組めばよいだろうか。 結論からいえば、あまり気負いすぎないことだ。わたしたちは、憲法は不断の見直しが欠かせないと訴える一方、憲法改正そのものが目的であるかのような改憲論とは距離を置いてきた。 この…

象徴天皇について(2) ~「象徴」の意味~

象徴とは、 直接的に知覚できない概念・意味・価値などを、それを連想させる具体的事物や感覚的形象によって間接的に表現すること(大辞林第3版(三省堂)) である。つまり、「天皇」という<直接的に知覚できない概念・意味・価値などを>、「陛下」という…

象徴天皇について(1) ~「象徴」という言葉の由来~

《毎日新聞が16、17日に実施した全国世論調査で、象徴としての天皇の役割について「果たされている」とした回答は9割近くにのぼった。このうち「十分果たされている」との回答は20歳以上の全世代で6割を超え、40代と50代では7割超。支持政党別でみても、党中…

東名あおり運転事故判決について(2) ~大陸法 vs. 英米法~

《判決は、被告のあおり運転と夫婦の死亡に因果関係があると認定して同罪を適用した。 一方で、高速道路上に停止させた速度ゼロの状態が同罪の構成要件である「重大な危険を生じさせる速度」とするのは、解釈上無理があるとも指摘した。 同罪があくまで「走…

東名あおり運転事故判決について(1) ~罪刑法定主義~

《東名高速道路で昨年6月、執拗(しつよう)なあおり運転を受けて停車させられた夫婦がトラックに追突されて死亡した事故で、横浜地裁の裁判員裁判は石橋和歩被告に危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年の判決を言い渡した》(2018年12月15日付産經新聞主…

立憲山尾衆院議員の「立憲的憲法改正」について(4) ~不文憲法と議論の両輪~

「自生的秩序」を生かすことは重要ではあるが、「弱点」もある。 though the use of spontaneous ordering forces enables us to induce the formation of an order of such a degree of complexity (namely comprising elements of such numbers, diversity…

立憲山尾衆院議員の「立憲的憲法改正」について(3) ~日本は不文憲法を採用すべきだ~

《老子に「天網恢々、疎にして漏らさず」(漏が失になっている書物もある)という名言がある。天の打つ網はめがあらいようでも、ちゃんと逃さないものだという意味であるが、この頃つくづくこの語の妙味に感嘆する。天の作せるわざわいは逃れることはできて…

立憲山尾衆院議員の「立憲的憲法改正」について(2) ~天網恢恢、疎にして漏れっ放しの憲法?~

《憲法九条があるにもかかわらず、専守防衛を逸脱し集団的自衛権の一部を認める安保法制は成立してしまいました。 そうです。憲法九条は安保法制を止めることができなかった。憲法の本質的役割は権力統制にあるにもかかわらず、最も権力が先鋭化する「自衛権…

立憲山尾衆院議員の「立憲的憲法改正」について(1) ~慣習法 vs. 制定法~

謹賀新年 本年もよろしくお願いいたします 一昨年末、立憲民主党の山尾志桜里衆院議員が、「立憲的憲法改正」なる考え方を公にした。 《私は、権力者による権力拡大方向の改憲には断固反対だが、国民の側から国家権力を統制する方向の改憲、すなわち立憲的改…

憲法審査会について(2) ~木に竹を接ぐ改正案~

《憲法審は伝統的に与野党協調を重視して運営されてきた。国家の根幹である憲法の改正論議には与野党の枠を超えた幅広い合意が必要との共通認識があったためだろう。 だが、今回は異例の会長職権で開催に踏み切り、幹事を選任しただけで実質審議は行われなか…

憲法審査会について(1) ~自民の横暴、野党の怠慢~

《今国会で初めてとなる衆院の憲法審査会が先ごろ開かれた。 自民党は9条への自衛隊明記など4項目の改憲条文案を提示するため早期開催を求めていた。立憲民主や国民民主など野党6党派は開催強行に反発し、欠席した》(12月5日付京都新聞社説) 自民も自民…

自民・下村氏の「職場放棄」発言を巡って(2)~日本国憲法の中で憲法問題を考える愚~

≪憲法改正の是非を決める国民投票への参加は主権者国民の重要な権利だ。国民投票の制度を整えなければ大切な権利を行使する状態が損なわれ続ける。憲法を守れ、立憲主義を守れというなら野党も積極的に取り組むべきだ≫(11月19日付産經新聞) 最右翼たる産經…