保守論客の独り言

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立憲山尾衆院議員の「立憲的憲法改正」について(1) ~慣習法 vs. 制定法~

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 一昨年末、立憲民主党山尾志桜里衆院議員が、「立憲的憲法改正」なる考え方を公にした。

《私は、権力者による権力拡大方向の改憲には断固反対だが、国民の側から国家権力を統制する方向の改憲、すなわち立憲的改憲議論は積極的にすべきだと考える。

 とりわけ、安倍政権下で現行憲法が機能不全に陥っている現象を目の当たりにした現在、安倍政権の横暴を正すべく、権力統制規範たる憲法の「価値」を守るため、憲法の「文字」を変える必要があると考える。

 したがって、私は憲法の価値を守るという意味では「護憲派」であるが、憲法典の文字に焦点をあてるならば、「改憲派」である》(山尾志桜里「立憲的憲法改正のスタートラインとは」:2017年12月26日付「WEBRONZA」)

 <立憲的憲法改正>とは立憲主義を徹底するために憲法改正を行おうというものことである。山尾議員は自分が「護憲派」だと言っているが、改憲を主張する以上、何がなんでも改憲を許さないという頑迷な「護憲派」とは一線を画する。やはりこれまでの「護憲派」vs.「改憲派」とは異なった「立憲的改憲派」という新しい考え方と言うのが適切であろう。

《本来、憲法は権力統制規範である以上、「改憲」とはこの権力統制規範力を高めるものでなければならない》(同)

 が、問題はどうやって権力を統制するのか、その手法である。

 まず、憲法を自生的な「慣習法」(law)として捉えるのか、それとも人工的な「制定法」(statute)として考えるのかということが問題となる。多くの人が憲法というと「制定法」としての「成文憲法」しか頭に浮かばないであろうが、憲法にはもう1つ「慣習法」としての「不文憲法」がある。実際、英国には「成文憲法」はない。つまり、英国は「不文憲法」を採用している国ということになる。

 私がずっと主張しているのは、日本は英国流の「不文憲法」で行くべきだということなのであるが、ここで参考になるのがハイエクの「秩序論」である。ハイエクは「秩序」を次のように2つに分類して論を進める。

The made order which we have already referred to as an exogenous order or an arrangement may again be described as a construction, an artificial order or, especially where we have to deal with a directed social order, as an organisation. The grown order, on the other hand, which we have referred to as a self-generating or endogenous order, is in English most conveniently described as a spontaneous order. Classical Greek was more fortunate in possessing distinct single words for the two kinds of order, namely taxis for a made order, such as, for example, an order of battle, and kosmos for a grown order, meaning originally 'a right order in a state or a community. ― F.S.Hayek, Law, Legislation and Liberty:Volume 1:2 The two sources of order

(すでに外生的秩序や取り決めと呼んだ作られた秩序は、構築物、人工的秩序、あるいは特に、指示された社会秩序を扱わねばならない場合には組織と呼ぶこともあるだろう。他方、自己生成的や内生的と呼んだ成長した秩序は、英語では非常に便宜的に自生的秩序と呼ばれる。古代ギリシャ語の方が、2種類の秩序、すなわち、例えば戦場の秩序のような作られた秩序を表すタクシス(taxis)と、元々は「国家や社会における正しい秩序」を意味する成長秩序に対応するコスモス(cosmos)に当たる明確な単語を有していたという点で幸運であった)

 この「作られた秩序」に当たるのが「成文憲法」であり、「自生的秩序」に当たるのが「不文憲法」ということになる。【続】