保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

戦後日本を強化する憲法改正論について(4) ~「後法優先の原則」~

《九条に自衛隊の存在を明記すれば、戦後日本の平和主義は変質する恐れがある。(中略)

自民党案では、九条には国と国民を守るため「必要な自衛の措置をとる」として「自衛隊を保持する」との条文を加える。「自衛の措置」の明文化は、集団的自衛権の行使を正式に認めるとも解釈できる。違憲の疑いがある安保法を合憲化し、自衛隊の活動を無制限に拡大する危うさをはらむ。

 現行の一、二項は残すとしても、戦力不保持、交戦権否認という平和憲法の土台は大きく揺らぐことになろう》(79日付東京新聞社説)

 自衛隊は現に存在している。つまり<戦力不保持>などとうの昔に崩れてしまっているのである。<交戦権否認>も良く分からない。仮に他国が日本に攻め込んできた際、自衛のために戦ったとしても、その権利は守られないというのが<交戦権否認>ということであるが、果たしてこれが<平和憲法>なのか。

自衛隊明記は安保法制で容認された集団的自衛権の行使を追認するということだ。さらに「後法優先の原則」がある。後にできた法が前法より優先し、1項、2項を残したとしても戦力および交戦権の否認は空文化する》(78日付沖縄タイムス

 「後法優先の原則」を指摘しているのは沖縄タイムスだけのようだが、この指摘は重要である。自衛隊保持を憲法に明記されれば、<戦力不保持>が上書きされてしまうということである。

《党総裁の安倍晋三首相は九条への自衛隊明記を「防衛の根本」と明言。「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」と意気込む。

 しかし、国民の間でそんな論争が起きているのだろうか。

 内閣府が昨年行った世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」が約九割。共同通信社による直近の世論調査では、安倍政権下での改憲に「反対」が50%なのに対し「賛成」は35%にとどまる。国民の多くは、現状のままの自衛隊を受け入れている》(同、東京新聞

 そもそも憲法問題のような、日常生活からかけ離れた、非常に重い問題を国民が論争するなどということがあり得るはずがない。例えば、憲法前文があろうがなかろうが国民生活は変わりはしない。が、

平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した

 などという文言は、敗戦後すぐに押し付けられた時ならいざしらず、70年以上が過ぎた今も残存しているのは政治の不作為以外の何物でもない。もちろん、改正することに対する米国などからの圧力があるのだろうけれども、それにしても酷(ひど)い文章である。

 こういった本筋の議論がなされずに、自衛隊明記などといった小手先の変更を「憲法改正」などと言っていることに私は納得がいかない。こんな不道徳な憲法などとっとと廃棄してしまえ、そして歴史と伝統に基づいた不文憲法でいけ、というのが私の年来の主張である。【了】