自民党は9条への自衛隊明記など4項目の改憲条文案を提示するため早期開催を求めていた。立憲民主や国民民主など野党6党派は開催強行に反発し、欠席した》(12月5日付京都新聞社説)
自民も自民なら、野党も野党である。
安倍首相が目指す憲法改正を早期に実現するため、一定の議論を経たという「アリバイ工作」のために審査会を使おうとするのであれば、それは審査会本来の趣旨に反するだろう。
《国の最高法規について真摯(しんし)に議論することが、憲法審査会の本来の役割である》(12月4日付読売新聞社説)
そもそも自民改憲案は何のための「改正」なのかが分からない。9条2項を残したまま自衛隊保持を明記するなどという「矛盾」を冒(おか)そうとするのはなぜか。本来は9条2項を削除して自衛隊保有を明記するのが筋だが、これだと軋轢が大き過ぎて改憲の実現に漕ぎ着けるのは難しい。だから取り敢えず自衛隊の明記だけにとどめておこうということなのだと思われる。
《立民党は「憲法論議の環境が整っていない」と主張している》(同)
<憲法論議の環境>を整えるのも自分たちの仕事の内ではないか。ただ<環境が整っていない>などとふんぞり返って審議を拒否するのは「職場放棄」と言われても仕方がない。
憲法論議とはただ改憲案を議論するだけにとどまらない。護憲派は護憲の意義をしっかり開陳すればいいのである。が、今の護憲派には改憲案を否定することは出来たとしても護憲の積極的理由を語れる人間がいない。だから審議を拒否するしかないのではないか。
否、野党は必ずしも憲法観において一枚岩ではない。それが、議論することが出来ない最大の問題なのではないか。
立憲民主党の枝野幸男代表にしても、かつて9条改正試案を月刊誌に寄稿している。
《憲法のあり方について、各党が自らの見解を国会で堂々と披瀝(ひれき)し、建設的な論戦を深める。それが立法府の責務だ》(同)
各党は必ずしも同じ憲法観の人達が集まっているわけではない。したがって、党単位で見解を披瀝し議論するというわけにはいかない。
例えば、自民党内には改憲派もいれば護憲派もいる。改憲派の中には安倍首相のように戦後体制を堅固にすべく改憲しようとするものもいれば、自主憲法を制定すべきだとするものもいる。
現行憲法は無効であり、大日本帝国憲法に戻すべきだとするものもいれば、日本には成文憲法は不要であり、不文憲法とすべきだとするものもいるに違いないのである。【続】