保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

幼稚な憲法議論を駁(ばく)す(4) ~近視眼的憲法観~

憲法を子どもにも分かるやさしい表現で伝えよう。そんな試みが広がっています。

憲法=檻(おり)、権力=ライオンに例えた解説書「檻の中のライオン」(かもがわ出版)は、2016年の発行から増刷を重ね、すでに13刷、約2万部に達しました。出版社によると憲法関連本では異例の売り上げといい、昨年は絵本にもなりました。

 例えば、権力を法で縛る立憲主義の考え方は「私たちにかみついたりしないように、ライオンには檻の中にいてもらう」、国民主権は「私たちを守る檻を作るのは私たち」、個人の尊重、幸福追求権(13条)は「なにが幸せかは人それぞれだから、ライオンはとやかく言ってはいけない」といった具合です》(5月3日付神戸新聞社説)

 ライオン(権力)を織(憲法)に閉じ込めておけば国民は安全だ、などというのは幼稚過ぎて話にならない。が、こんな幼稚なことを「社説」に書いてくるのは自分が幼稚であることに気付いていないのであろう。

 反権力こそが正義だと思っている人たちは「権力」を目の敵にするのだけれども、日本の権力など中国や北朝鮮と比べたら可愛いものである。例えば一強の安倍政権にしても、世論調査で国民の支持が得られなければ簡単に瓦解(がかい)してしまう程度の権力でしかない。一方、中国や北朝鮮のような独裁国家は有無を言わせぬ生殺与奪の権を掌握している。

 それどころか、日本を取り囲む国々は日本に対して様々な形で圧力を掛けてきている。竹島は韓国に実効支配され、北方領土はロシアに不法占拠されたまま、尖閣諸島も米軍の睨みがなくなれば中国に奪われてしまいかねない。北朝鮮はいまだ百人以上の日本人を拉致したまま返そうとせず、中国、韓国は執拗に歴史戦を仕掛けてきてもいる。

 日本の権力を檻に閉じ込めれば国民は安全安心だなどということは有り得ない。憲法9条も、日本さえ他国に侵略戦争を仕掛けなければ平和が保たれるなどという倒錯によって成り立っているが、これこそ第2次大戦の戦勝国が日本の自由を奪うために設けた「檻」である。

 話は逆なのだ。大東亜・太平洋戦争は、大きくはソ連スターリンが仕掛けた罠であり、日本は様々な形で戦争へと追い込まれていった。このことに気付かぬ英国、米国は日本と矛を交えることとなってしまったが、結果、大戦後どうなったのか。共産主義が世界を侵食していったのである。北東アジアにおいても、日本が食い止めてきた共産主義が南下し、中国、北朝鮮が誕生することとなった。

 また、国連常任理事国P5(米英仏露中)は「核保有国」となり、世界をほしいままにする戦後体制が築かれた。

 本当に「檻」に入れなければならなかったのは戦勝国そして共産主義ではなかったのか。日本のことしか見えていない「ライオンの檻」など有害無益である。【了】