保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

日本国憲法第9条2項は主権放棄条項だ(2) ~「力の均衡」が大前提~

《これ(=憲法9条)によって国際平和が実現できるのかといえば、むしろその正反対なのです。国際平和というものは基本的に主権国家が集まって互いの持つ「最高の力」を均衡させておくことで保たれています。その中に突如として戦力ゼロの軍事的空白地帯が出現したりすれば国際平和にとってこんな危険なことはない。9条2項はもしその条文通りを実行したらばまさしく平和破壊条項となるのです》(長谷川三千子「いまこそ憲法9条2項の削除を」:8月7日付産經新聞「正論」)

 現在は米軍が睨みを利かせているから北東アジアの「力の均衡」は保たれている。が、もし日米安全保障条約が破棄され米軍が日本から撤退するようなことになれば、ここぞとばかりに力の空白地日本へと近隣諸国が雪崩れ込んでくる可能性は決して低くない。自分の国は自分で守る、このことが物理的にも精神的にもなければ日本は独立を維持することは出来ないだろう。

 日本の平和は、在日米軍における「力の均衡」によってなされているのであり、決して憲法9条によってなされているのではない。日本が他国に攻めていかなければ戦争は起こらないなどと考えているのがまさに「平和呆け」である。

 先の大戦は日本が大陸を侵略することによって起こったのではない。それどころか日本は対英米戦争に追い込まれたのである。ABCD包囲網で物資が絶たれ、ハルノート最後通牒を突き付けられれば、戦わざるを得なかった。

《実に石油の輸入禁止は日本を窮地に追込んだものである。かくなった以上は、万一の僥倖(ぎょうこう)に期しても、戦った方が艮いといふ考が決定的になったのは自然の勢と云はねばならぬ、

若(も)しあの時、私が主戦論を抑へたらば、陸海に多年錬磨の精鋭なる軍を持ち乍(なが)ら、ムザムザ米国に屈伏すると云ふので、国内の与論は必ず沸騰し、クーデタが起つたであらう。実に難しい時であった。

その内にハルの所謂最后通牒が来たので、外交的にも最后の段階に立至った訳である》(『昭和天皇独白録』(文春文庫)、pp. 84-85)

 やりたくもない、否、やってはならない対英米戦へと日本はどうして追い込まれてしまったのか、そのことに対する反省があれば、憲法9条がいかに頓珍漢(とんちんかん)な平和の処方箋であるかが分かるだろう。

 戦争に巻き込まれないようにするためには、自分の国は自分で守ることが装備においても気概においても必要であり、そのことによって力を均衡させることが戦争を引き起こさないための大前提である。

 日本が真の主権国家たらんとするなら、9条2項の非武装条項は削除せねばならない。【了】