保守論客の独り言

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トランプ米大統領の日米安保破棄発言について

《トランプ米大統領日米安全保障条約を破棄する考えを側近に漏らしていたと米ブルームバーグ通信が報じた。米軍普天間飛行場の移設についても「(米軍の)土地の収奪だ」として、日本政府に金銭的補償を求める考えを示していたという。

 米国が本当に破棄を望むのなら、沖縄の米軍基地を平和につながる生産の場に変えることも可能だろう。辺野古の新基地建設も不要になる。政府はむしろ、これを奇貨として対応を検討すべきだ》(627日付琉球新報社説)

 まさに「素人政治家」トランプ氏ならではの暴言であるが、これからもこのような発言が繰り返されないとも限らないから、こちらとしても日米安全保障体制の在り方を再考しておく必要もあるだろう。

 言うのも馬鹿馬鹿しいが、在日米軍は日本を守るために駐留しているのではない。1つは、いざという時、アジアへ迅速に軍事展開できるよう日本に基地を置いているのである。もう1つは、日本が必要以上に軍事拡大しないように「瓶の蓋」としての意味合いもある。

 仮に米国が日米安保を破棄すればどうなるか。日本に米軍の前線基地がなくなれば、アジアは中国のしたい放題となる。そのことは日本の安全保障上の問題となり、日本は憲法9条を改正し、他国の侵略を許さぬよう防衛力強化を目指し、場合によっては、核武装という話にならないとも限らない。一方、米国はアジアでの発言権が弱まり、ますます地方の一大国へとずり落ちていくことになるであろう。

《米国は日本を防衛し、日本は基地を提供することが安保条約の骨格で、「非対称的双務関係」とも呼ばれる。安保条約は、米国にとっても死活的に重要である。

 日本の基地提供のおかげで、米軍は北東アジアはもとより、西太平洋から中東まで展開できる。破棄は米国の世界戦略を根底から覆す。日米同盟がなければ、米国は中国との「新冷戦」を有利に進めることもできない。中国の覇権を阻めなくなるだろう》(628日付産經新聞主張)

 また、日米安保は日米二国間だけのものではない。

《日米同盟は、インド太平洋の諸国民の自由と繁栄の前提となる国際公共財だ。その維持は、日米の国際的な責任である》(同)

 現行の日米安保が破棄され、新たな日米同盟が結ばれるのであれば問題はない。否、私は、憲法9条問題も在日米軍基地問題も、これらを解決解消しようとすれば日米安保見直しが必須であろうと思っている。

 が、日米共に不満のある日米安保見直しを言うのは簡単であるが、実際に見直し案を日米のみならず世界が納得いく形で策定するのは容易なことではない。

 トランプ氏は日本の負担増を引き出すために不満を吐露したのであろうが、安保破棄は米国の国益をも大いに毀損(きそん)するということをしっかり認識してもらうことが中長期的は別として短期的には必要なのではないか。