保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

思想・哲学

戦前の汚名を雪(すす)げ(2) ~戦勝国の犬~

安倍戦後70年談話を出すに先立ち意見を求めた有識者懇談会の報告書は次のように記す。 「日本は満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第1次世界大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済的発展主義という流れから逸脱して世界の大勢を見失い、無謀な戦争…

戦前の汚名を雪(すす)げ(1) ~春秋に義戦なし~

《「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」 日本国憲法の前文にあるこのくだりを文字通りに受け止めた非武装中立論は、戦後日本で長く一定の賛意を得てきた。日米同盟を「わが国を戦争に巻き込むもの」と批…

民主主義を立て直す方法:「くじ引き」について(2) ~民主主義は絶対ではない~

《とりわけフェイスブックやツイッターといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及してから、政治家は自分の言動に有権者がどう反応しているか、即座に把握できるようになった。消費者に衝動買いしてもらうように、マーケティングで有…

民主主義を立て直す方法:「くじ引き」について(1) ~民主主義の足掻(あが)き~

民主主義を立て直す方法として、選挙をやめ、くじ引きを導入するように提唱したダーヴィッド・ヴァン・レイブルック著『選挙制を疑う』が今、話題のようだ。 《減り続ける投票率、金や人脈がものを言う選挙戦。有力者の声しか反映されない政治に人々は背を向…

年金問題について(3) ~家族の復興こそ重要~

《日本の将来設計を描くとき、最も基礎的な条件は人口減少である。しかも平均寿命は延び続ける。この人口構成の大変動に耐えうる社会保障が求められている》(7月3日付毎日新聞社説) <将来設計を描く>とは、まさに左翼「設計主義」の謂(い)いであり、ソ…

年金問題について(2) ~家族解体による孤立感や疎外感~

《内閣府の国民生活に関する世論調査(18年度)で、人々が感じる悩みや不安のうち最も多いのは「老後の生活設計」である。 一方、人々が充実感を感じるのは「家族だんらんの時」が最多だ。「友人や知人と会合、雑談している時」も多い。家族や隣近所のつな…

戦後日本を強化する憲法改正論について(3) ~「東京裁判史観」を見直せ~

《憲法は国家の基本原則を定めたものだ。国家としての連続性を保証するものでもある。時代を超えて、変えてはならないものがある》(7月7日付毎日新聞社説) だったらどうして敗戦後、大日本帝国憲法は継承されなかったのか。実際、日本側は継承しようとした…

「民主主義の退潮を食い止めよ」という読売社説(4) ~民主主義は絶対ではない~

《民主主義の脆弱(ぜいじゃく)さを認識した上で、民意をより良く反映し、安定した政治を実現できる制度を築き直さねばならない》(5月4日付読売新聞社説) どうして<民意をより良く反映>する制度を築き直さねばならないのだろうか。むしろ熱し易く冷め易い…

「民主主義の退潮を食い止めよ」という読売社説(3) ~見えているのは日本の「影」~

プラトン『国家』に「洞窟の比喩」というものがある。 「地下にある洞窟状の住いのなかにいる人間たちを思い描いてもらおう。光明のあるほうへ向かって、長い奥行きをもった入口が、洞窟の幅いっぱいに開いている。 人間たちはこの住いのなかで、子供のとき…

「民主主義の退潮を食い止めよ」という読売社説(2) ~「哲人政治」が必要だ~

《中露両国は強権政治で国内の異論を抑え込み、欧米の混乱を横目に国際的な影響力を拡大した。 中国の習近平国家主席も、ロシアのプーチン大統領も、自らに都合の良い方向に憲法を改正し、長期政権を可能にしている。権威主義的な統治は、ハンガリーやトルコ…

「民主主義の退潮を食い止めよ」という読売社説(1) ~民主主義こそが混乱の原因~

《平成が始まった1989年の米ソ冷戦終結と、その後のソ連崩壊は、自由民主主義体制の勝利と受け止められた》(5月4日付読売新聞社説) このような言い方が誤解を招くのである。米ソ冷戦とは「自由主義」対「全体主義」の戦いだったのであり、ソ連邦崩壊を…

女系天皇について(4) ~静謐な議論こそ必要だ~

《立憲民主党は11日、安定的な皇位継承を確保するための論点整理を発表した。女性天皇、父方に天皇がいない女系天皇、女性宮家創設のいずれも容認する。皇位継承順は男女の別にかかわらず、天皇直系の長子を優先する》(6月12日付東京新聞朝刊) 私には、立…

女系天皇について(3) ~女系天皇論の危険~

《現在の制度では女性皇族は結婚すれば皇族でなくなり、皇族の数は減っていく。私としては女性皇族には結婚後も皇室に残ってもらって女性宮家を創設し、層を厚くして皇室を守る形を作る必要があると考えている》(長浜博行「女性・女系天皇 代替わりをきっか…

女系天皇について(2) ~ごまかしの戦後日本~

長浜博行・元環境大臣は言う。 《誰かが決めたものをただ与えられたと国民が感じるならば、明治時代や大正時代と変わらない。自分たちの代表による法律と手続きによって決まったと国民が納得することが大切だ》(4月1日付毎日新聞) まさに戦後日本の申し子…

女系天皇について(1) ~<象徴天皇>という錯誤~

長浜博行・元環境大臣が御代替わりを切っ掛けとして「女性・女系天皇」の国民的議論を行うことを求めている。 《平成という時代は象徴天皇とともにあり、そして天皇陛下が平成の時代の天皇のあり方を身をもって示された。 退位を提起されたのも、国民に象徴…

「国民の幸福を祈ることが皇室の伝統」なのか(2) ~戦前と戦後の矛盾~

《平成28年8月8日に発表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」で、上皇陛下はこう仰せになっている。 <即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来…

「国民の幸福を祈ることが皇室の伝統」なのか(1) ~國體という言葉の変遷~

《74年前、米国を中心とした占領軍が日本を占領し、政治、教育、社会、家族制度などを変えられた。憲法も変えられ、第1条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と規定された。当時、日本の国柄=国体は変更されたかどうかが議論になった。…

裁判員制度10年(5) ~有害な民主主義論~

《もしも市民に付与される公共的義務がかなりの量にのぼることが環境上許されるならば、そのことは市民を教育のある人にするであろう。古代の社会制度と遺徳的理念には欠陥があったにもかかわらず、市民裁判や市民集会の習慣は、アテナイ市民の知的水準を、…

裁判員制度10年(4) ~民主主義を学ぶ学校~

《殺人でも量刑が重くなる傾向があり、裁判員らは死刑判決もいとわなかった。制度開始時には一般国民が死刑を選択できるか疑問視する意見もあった。だが裁判員は真摯(しんし)に事件と向き合い、悩んだ末に多くの裁判で死刑判決を選択した》(5月20日付産經…

女性天皇と女系天皇(2) ~女性天皇待望論?~

《「新しい天皇の即位式の映像見て、人口減少で存続の危機にあるのは経済国家としての日本だけでなくその皇室もだってことに気づいたわ」という下りから始まるニューヨーク•タイムズ紙の記事を読んで、日本の皇室の長い歴史の中には、女性が天皇だったことが…

平成日本について(3) ~日本経済新聞は軽薄な反日メディア~

《平成の時代に直面した最大の試練は、人口減社会の到来だろう。少子高齢化で人口が急減する恐れは早くから指摘されていた。しかし若年層の雇用や所得水準はむしろ悪化し、出産や育児、教育への支援策も後手に回った》(4月30日付日本経済新聞社説) 「人口…

平成日本について(2) ~反省なきマスコミ~

《平成の出典となった「内平らかに外成る」「地平らかに天成る」の言葉には、日本と世界の平和と繁栄への思いが込められていた。 しかし90年代に日本が直面したのは、バブル崩壊の後遺症といえる金融機関の不良債権問題や長期デフレ、冷戦後の国際政治の激動…

平成日本について(1) ~刹那主義が蔓延した時代~

《日本は元号の二文字に託した願い通り平和な時代を過ごすことができたが、成長力の鈍化や人口減社会という新たな課題への処方箋を見いだせなかった30年でもあった》(4月30日付日本経済新聞社説) 果たして平成は「平和」だったのか。「平和」だったと考え…

「小島慶子『令和の皇室は生きづらさを覚える現代の家族の象徴だと思う』」について

<夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する>という小島慶子女史に分からないのは仕方のないことなのであろうか。小島女史は言う。 《新天皇が即位して、元号が新しくなる。それで時代は変わるのでしょうか》(AERA 2019年5月13日号)…

日本国憲法と天皇制(3) ~天皇の真の有難み~

《阪神大震災や東日本大震災などの災害をお見舞いし、被災者を励ます。膝を折り、被災者に寄り添う姿は、陛下の時代から生まれた新しい象徴天皇の姿だったといえる》(4月27日付東京新聞社説) これが<象徴天皇>というのなら、一体何を<象徴>していると…

日本国憲法と天皇制(2) ~日本人の心から消えゆく天皇~

《天皇にはまず象徴という地位があると考えるしかない。「象徴としての行為」とは、それを具現化するためのいとなみである。だから憲法に規定はないが、国事行為とも私事とも異なる重要な公的行為が「象徴としての行為」となる。具体的には国民に寄り添い、…

日本国憲法と天皇制(1) ~天皇制廃止論者の理屈~

日本国憲法 第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 《象徴とは何か-。この漠たる表現に最も悩まれたのは天皇陛下ご自身だったかもしれない。陛下がこのテーマについて考えを巡らし…

象徴天皇の在り方を模索するという錯誤について(3) ~国民には死者も含めて考えるべし~

《象徴天皇制は、国家の制度を特定の個人と一家が背負う仕組みであり、その人数、年齢、健康状態などに起因する限界や矛盾を常に抱える。何より、公務を担う皇族が減るなか、平成の時代にぎりぎりまで広がった活動を、この先いかなる判断基準に基づき、どう…

象徴天皇の在り方を模索するという錯誤について(2) ~未だ直らぬ朝日の歪んだ歴史眼~

《この間、天皇や皇室をめぐる議論は活性化し、様々な角度から事実の解明や分析があった。 終身在位など当然視されてきた事柄の多くは、明治期に作られたものであること。歴史を顧みると、旧憲法下の神権天皇制の異様さが際立つこと。戦犯裁判の判決を受け入…

象徴天皇の在り方を模索するという錯誤について(1) ~けじめ無き日本~

《天皇陛下がきょう4月30日をもって退位する。 陛下にとっては、日本国憲法が定める象徴天皇像を追い求める「旅」に終止符を打ち、緊張から解放される日といえる》(4月30日付朝日新聞社説) 日本の悠久の歴史を貫く天皇をマッカーサーに指令に従って拘束…