保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

「民主主義の退潮を食い止めよ」という読売社説(1) ~民主主義こそが混乱の原因~

《平成が始まった1989年の米ソ冷戦終結と、その後のソ連崩壊は、自由民主義体制の勝利と受け止められた》(54日付読売新聞社説)

 このような言い方が誤解を招くのである。米ソ冷戦とは「自由主義」対「全体主義」の戦いだったのであり、ソ連邦崩壊を「民主主義」の勝利のごとくに読み替えるのは誤りである。

《30年後の現在、中国とロシアの権威主義が勢いを増し、欧州と米国では民主主義の退潮が目立つ》(同)

 米中新冷戦も「自由主義」対「全体主義」の戦いなのであって、<権威主義>だの<民主主義>だの持ち出して話を混ぜ返しても始まらない。

 かつての米国は民主主義が機能していたが、今の米国の民主主義は機能不全を起こしているなどという話は米国の本質がただ見えていないだけである。米国は、民主主義という言葉を使うのなら、今も昔も変わらず民主主義国である。

《欧州と米国で近年、連鎖反応のように広がる動きがある。

 既成政党やエリート層に対する不信、自国第一主義、移民への敵視だ。グローバル化と技術革新から取り残された人々の反発を、ポピュリズム大衆迎合主義)的な政治家や極右政党があおり立て、既存の支配層を脅かす。

 グローバル経済で格差が広がった。国際機関や国際協定への参加で政府の権限が制約された。こうした事情が背景にあろう》(同)

 行き過ぎたグローバリズムが揺れ戻され、自由主義の退潮が目立つようになってきたのは事実であろう。が、むしろこれは民主主義が機能してのことである。民主主義は平等を旨とする。自由なグローバリズムによって広がった「格差」を是正しようとする動きはまさに民主主義的である。

 また、大衆に迎合するポピュリズムも、政治が大衆に迎合することの是非は別として、大きく見れば民主主義の産物に他ならない。

《都市のエリートと地方の労働者層、国際協調主義者とナショナリストが対立し、社会の分断・二極化が進む。極端な主張が支持を集め、中道・穏健派が存在感を失う状況は正常とは言えまい》(同)

 どうして社会は二極化し分断されようとしているのか。このことについて何らその原因を述べずただ異常事態だと言い募っても混乱を煽るだけである。

 敢えて言えば、冷戦終結によって「民主主義」が勝利したかのように安易に思い込んだことこそが今のような混乱を招いているのではないかということである。むしろ、民主主義こそが混乱の因のように私は思っている。

 もう少し丁寧に言えば、民衆が社会の主権者であるかのような甘やかしが民衆の気分を増長させ社会を混乱させているのではないかということである。【続】