保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

年金問題について(2) ~家族解体による孤立感や疎外感~

内閣府の国民生活に関する世論調査(18年度)で、人々が感じる悩みや不安のうち最も多いのは「老後の生活設計」である。

 一方、人々が充実感を感じるのは「家族だんらんの時」が最多だ。「友人や知人と会合、雑談している時」も多い。家族や隣近所のつながりが薄くなり、孤立感や疎外感を人々にもたらしている。それが、家族だんらんを求める心理の裏側にあるに違いない》(7月3日付毎日新聞社説)

 「家族団欒(だんらん)」など今や死語となりかけてしまっていようが、ここに来てこのような指摘をしてくれるのは、古き良き日本を大切にしたいと思う私にとってはとても嬉しいことである。

 家族団欒が壊れてしまったのはなぜか。それには様々な要因が考えられようが、やはりマルクス・エンゲルス共産党宣言』にみられる家族解体の考えが陰に陽に影響しているのではないかと思われる。

《家族の廃止! もっとも急進的な人々さえ、共産主義者のこの恥ずべき意図に対しては、激怒する。現在の家族、ブルジョア的家族は、何に基礎をおいているか? 資本に、私的営利にである。完全に発達した家族は、ブルジョア階級にだけしか存在しない。しかも、そういう家族を補うものとして、家族喪失と公娼制度とがプロレタリアに強いられる。

 ブルジョアの家族は、この補足がなくなるとともに当然なくなる。そして両者は資本の消滅とともに消滅する》(マルクス・エンゲルス共産党宣言』(岩波文庫)、p. 63)

 今でこそマスクス思想は鳴りを潜めてしまったが、1989年にソ連邦が解体するまで、戦後日本に大きな影響を与えたことは間違いない。

 マルクス主義者の問題は、マルクスが家族は解体されると予言したのを、家族を解体しなければならないと解釈し行動したことである。大家族から核家族へと家族形態は変容し、今やさらに家族はばらばらになりつつある。それが<孤立感や疎外感>を生み出している。

《高齢者の独居や認知症はさらに増える。必要なのは安心できる住居や食事、親しい人と過ごすことで得られるやすらぎや生きがいだろう。

 ところが、家族だんらんが少なくなり、家族を支えたり補ったりすべき国家による社会保障の信頼度が落ちている。そこに国民の不安があるのではないか》(同、毎日新聞社説)

 社説子の問題意識に共感する部分が少なくないが、このあたりから考え方が違ってくる。<国家による社会保障の信頼度が落ちている>のが問題なのではない。これまでは信頼度が高かったから問題がなかったのではなく、家族というものが曲がりなりにも成立していたからこそ大きな問題とならなかっただけである。が、家族の解体が進み、今や国家による社会保障なしには成立し得なくなってしまったのである。【続】