保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

年金問題について(3) ~家族の復興こそ重要~

《日本の将来設計を描くとき、最も基礎的な条件は人口減少である。しかも平均寿命は延び続ける。この人口構成の大変動に耐えうる社会保障が求められている》(73日付毎日新聞社説)

 <将来設計を描く>とは、まさに左翼「設計主義」の謂(い)いであり、ソ連邦解体によってその失敗が明らかとなったにもかかわらず、このような言い方をするのはやや鈍感に思われるが、扨(さ)て措こう。

 将来の少子高齢社会における社会保障をどうするのかが問題だというのは、その通りである。

《これからは年金より医療や介護の費用の増加率の方が大きい。介護分野では人手不足がすでに深刻だ。

 社会保障を持続させるためには、少子化に何とか歯止めを掛け、長期間にわたる財源と労働力の確保に努めなければならない》(同)

 社会保障の充実ばかりを言えば、日本は北欧同様の「福祉国家」となってしまう。それは日本人のエートスethos)に合わないからこそ、日本は中福祉を選択してきたのであって、社会保障の充実と同時に、自助や共助の改善もまた必要ではないかと思われる。

 昨日も触れたが、家族の解体が進むことによって孤立感や疎外感が生じている。それだけではない。家族の解体現象は子育てにも高齢者介護にも大きく影響している。少子化も元を辿れば家族の解体に行き着くだろう。

 つまり、望まれるのは「家族の復興」であると私は考える。

《安倍政権は少子化対策として保育所の増設や保育士の待遇改善、幼児教育無償化などを行ってきた。余裕のある高齢者の介護負担も上げるなど、世代内の支え合いについても着手はしている。

 しかし、人口減少や家族機能の弱体化によって暮らしの地盤は崩落しようとしている。深刻な現実に対して、場当たり的に制度の補修をしているようにしか見えない。

 少子化対策と医療や介護の拡充を大胆に進めなければならない。そのためには、政治の強力なリーダーシップが必要だ》(同)

 違うのだ。社会にすべてをすがろうとするような考え方が日本を麻痺させている元凶である。社会保障を肥大化させてきた家族の解体を止めること、そして、自助、共助の精神を回復することが必要なのである。

 私は社会保障という公助を否定するのではない。が、自助、共助を抜きにして、初めから公助に頼るのは「甘やかされたお坊ちゃん」となってしまい、国家活力が失われてしまうと思うだけである。

《自ら助くるの精神は、およそ人たるものの才智の由りて生ずるところの根元なり。推してこれを言えば、みずから助くる人民多ければ、その邦国、必ず元気充実し、精神強盛なることなり》(中村正直西国立志編』(講談社学術文庫)、pp. 55-56)【了】