保守論客の独り言

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女系天皇について(4) ~静謐な議論こそ必要だ~

立憲民主党は11日、安定的な皇位継承を確保するための論点整理を発表した。女性天皇、父方に天皇がいない女系天皇女性宮家創設のいずれも容認する。皇位継承順は男女の別にかかわらず、天皇直系の長子を優先する》(6月12日付東京新聞朝刊)

 私には、立憲民主党が将来的な皇室撤廃を意図してこのように言っているような気がしてならない。<安定的な皇位継承を確保するため>などというのは建前的なものであろうと疑っておくべきであろうと思われる。

《立民の論点整理は「男系男子」に限っている現行制度では「皇位継承者の先細りは避けられない」と指摘。「男系に固執するあまり、皇統そのものを途絶させることは甘受できない」として見直しを提起した。

 制度の変更に当たっては「永続的な安定性を確保」しつつ「歴史と伝統を踏まえ、国民に自然な形で理解と支持が得られることが極めて重要」と強調。女性、女系天皇を容認すれば「皇族の世襲を維持しつつ、現代の視点から歴史と伝統に厚みを持たせ、本質的要請に応える」とした》(同)

 そもそも立憲民主党がどうして皇室問題に熱心なのかがわからない。かつて辻元清美国会対策委員長は、天皇はこれを守りたい人だけが支えればよいのであって、天皇を規定した憲法の1条から8条は削除し、戦争放棄を定めた9条を新憲法の第1条にすべきだと主張したほどの人物である。

《戦後に皇籍を離れた「旧宮家旧皇族)」の男性の皇族復帰を巡っては、天皇陛下と血筋が遠く「国民の理解と支持、敬愛を得ることは難しい」と否定。婚姻による女性皇族の減少を避けるため、女性宮家を創設し、配偶者と子どもは皇族とすることも明記した》(同)

 はたして立憲民主党の言うように旧宮家の皇族復帰は「国民の理解と支持、敬愛を得ることは難しい」のだろうか。私はこのように決め付けるほどはっきりしていることではないように思う。

 世論調査でも行ってみればこのことがはっきりするかもしれない。が、旧宮家の皇族復帰がどのような必要性を持つものかを国民に理解してもらうのは難しく、現在のような表層的感覚だけで世論調査を行うのはやはり危険であろう。

 否、そもそも皇室問題を軽薄な世論調査に委ねること自体が問題ではないかと思うので、世論調査自体にあまり依存するのもどうかと思う。

 つまり、旧宮家の皇族復帰とは、<国民の理解と支持、敬愛を得ること>が問題なのではなく、その必要性が識者によって十全と検討されることが重要なのではないかと思われる。

 蛇足であるが、このような歴史伝統に関わる問題においては、<国民>は「生者」だけではなく「死者」をも含めて考えなければならない。だとすれば、それほど<国民の理解と支持、敬愛を得ること>は難しいわけではないであろう。

 皇室問題はもう少し平穏静謐(せいひつ)な議論を要するのであって、政治的な思惑に左右されるようなことは避けなければならない。【了】