保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

大阪市廃止住民投票について(2) ~3S政策~

次なる「大阪市廃止構想」の疑問は、大阪市を廃止して大阪府に一括し、これまで大阪市がやってきたことを大阪府が引き受けようという「下向きの仕事」と、大阪を副首都にという「上向きの仕事」との両方向の仕事を新たに請け負おうとする「空想」にある。

 はっきり言って、どちらの仕事も簡単なものではない。地盤沈下さえ止められない大阪にそのような仕事を請け負おうとする余力は一体どこにあるというのか。大阪市を廃止すれば、府の仕事は増える。それだけでも大変なのに大阪を副首都になどと言うのは現実を見ないただの妄想である。

 おそらくこういう絡繰(からく)りなのではないか。大阪市廃止は、単に枠組みを廃止するだけでなく、大阪市政令指定市として行ってきたサービスも廃止するということなのではないか。これなら仕事は増えない。また、副首都の話も、財源も人も国に準備させ、場所だけを提供するということであればこれまた仕事は増えない。

 さて、大阪で活気あるものと言えば、第一に「阪神タイガース」や「お笑い」が挙げられるだろう。とすれば、敗戦後GHQが敷いた日本骨抜き政策が未だ一番効いているのが大阪だということになる。

 GHQは日本が二度と米国に歯向かわないようにするための政策として「3S政策」なるものを企てた。

《第1のSはセックスの開放,第2のSがスクリーン,つまり映画・テレビというものを活用する。それだけでは民族のバイタリティ,活力,活気を発揮することがないから,かえって危ない。そこで精力をスポーツに転ずる。これをうんとやらせる。スポーツの奨励--これが第3のS》(安岡正篤(やすおか・まさひろ)『運命を創る』(プレジデント社)、p. 38)

 要は大阪は、消費活動にどっぷりと浸かってしまい、生産することに目が向かない状態にある。このことを改めない限り大阪の復興は有り得ないと思われる。

《今日の日本の堕落、類廃、意気地のなさ、こういう有様は昨日今日のことではない。非常に長い由来・因縁があるということを考えないと、これを直すことはできません。

 皆さんが今後起こってくる諸般の問題をお考えになるには、目先の問題をとらえた流行の皮相な理論では駄目でありまして…少なくも明治以来の思考の3原則によって徹底した考察をなさらないと正解を得られない。したがって、今後の真剣な対策も立たないということを私は信ずるのであります》(同、p. 40)

 <思考の3原則>とは、

《その1つは、目先にとらわれないで、できるだけ長い目で観察するということであります。第2は、一面にとらわれないで、できるだけ多面的、できるならば全面的にも考察するということであります。第3が、枝葉末節にとらわれないで、できるだけ根本的に観察するということであります》(同、p. 20)【続】