保守論客の独り言

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大阪市廃止住民投票について(1) ~大阪市廃止は単なるジリ貧~

大阪都構想住民投票が10月12日告示、11月1日投開票の日程で行われることが決まった》(9月7日付日本経済新聞社説)

 これは情報操作である。今回の住民投票は「大阪市廃止」の是非を問う引き算の話であるのに、<大阪都構想>などと言うから何か大阪市大阪都に昇格させようとしている足し算の話のように誤解しかねない。実際は大阪市を無くし、政令指定市大阪市が持っている自治権を手放す話でしかない。(参照:​地方自治法 第二編 普通地方公共団体 第十二章 大都市等に関する特例​)

 成程(なるほど)、大阪市が無くなれば「二重行政」はなくなろう。が、「二重行政の無駄」が問題だったのはバブル期の潤沢に原資がある時代であって、財政難に苦しむ今日、そのような問題は生じようもない。今頃「二重行政の無駄」の解消などと言うのは的外れである。

 一方、「二重行政」のすべてが「悪」というわけではない。「二重行政」は万一に備えるという補足的側面もある。維新の言う「大阪副首都構想」も「備えあれば憂いなし」的発想からくるものだろう。

 何が問題なのかを見極めず、ただ「二重行政」が問題だとして「必要な二重行政」までをも無くしてしまうのは愚かである。

《高速道路の整備や観光振興、都市計画、産業振興といった広域行政はこれまで府と市がともに担っており、『府市合わせ(不幸せ)』とも揶揄(やゆ)された。現在は大阪維新の会の2人が府市でトップを占め、調整・連携ができている状態だが、人間関係によるもので、制度的にできているわけではない》(「【都構想いろはQ&A】(1)大阪都構想の目的は 府と市の二重行政を解消」:産経WEST 2020.9.14 10:00)

という話がある。だったら府と市を<調整・連携>する仕組みや制度を作ればよいのであって、大阪市を無くして一元化しようとするのは粗雑なやり方である。

 ここで改めて確認すべきは、何のために大阪市を廃止しようとしているのかということである。それは「二重行政の無駄」を無くすことである。が、「二重行政の無駄」が解消されても大阪が豊かになるわけではない。「二重行政の無駄」が無くなっても収入は増えない。ただ「無駄遣い」つまり支出が減るだけである。

 つまり「大阪都構想」とは、懐(ふところ)事情が苦しくなってきたので倹約しようという話でしかない。勿論、住民が「清貧の思想」よろしく質素慎ましく暮らしたいというのであれば、それで構わない。が、どう収入を増やすのかではなく、どう支出を減らすのかばかりに目が向くというのはとても健全だとは言われないだろう。

 大阪の地盤沈下は「二重行政」の所為(せい)ではない。やはり根本的には、大阪の活力が低まったこと、つまりはそこに住まう人々の活力低下が原因であるというしかない。このことに蓋(ふた)をし建付けだけを変えたところで大阪が復活するわけがない。【続】