《政府が経済対策を閣議決定した。事業規模は約26兆円となった。「アベノミクスの加速」を名目に、約28兆円に達した2016年の経済対策に匹敵する。
国の財政支出は約7・6兆円だ。19年度補正予算と20年度当初予算に分けて計上し、「15か月予算」として編成する。財政投融資や地方の支出を含めた財政措置の総額は約13・2兆円に及ぶ》(12月6日付読売新聞社説)
消費増税しブレーキを踏んでおいて「アベノミクスの加速」はない。消費増税による景気の減速が明らかになる前に経済対策を打って失政を見えなくしようということなのか。こんな筋の通らぬ経済対策はない。一番の経済対策は「消費増税をしないこと」であったことは間違いない。
《大規模な財政出動が必要なほど経済が悪化しているかどうかは冷静にみておきたい。
消費税増税に台風の影響が重なり、10月の消費支出は5%以上も落ち込んだ。これが長引くようでは経済が失速しかねないが、今も政府が「景気は緩やかに回復している」という判断を維持していることを忘れてはならない。
安倍首相が対策の策定を指示した後、与党から10兆円規模の財政出動を求める声が相次いだ。その結果、まず金額ありきの対策になったことは否定できまい。
中小企業支援や地方創生関連などでは各省庁が似たような狙いの施策を盛り込んだ。対策の名を借りて不急の施策をもぐり込ませたのなら、水ぶくれといわれても仕方がない》(12月7日付産經新聞主張)
<水ぶくれ>の経済対策では大枚をはたいた割に効果が期待できないということにも成りかねない。何にどの程度の対策を行うのかをもっと精査すべきであるが、今の国会の為体(ていたらく)では如何ともし難いに違いない。
が、やはり気になるのが<危機的な財政状況>という「宣伝」(propaganda)である。
《たび重なる財政出動で国と地方の借金は1100兆円を超えた。
今回の対策の財源は、公共事業などに使途を限る建設国債や、過去の予算の使い残しの剰余金などで賄い、赤字国債は発行しないという。
だが建設国債も赤字国債も同じ借金であることに変わりない。剰余金も本来、借金返済に充てるべきだ。対策に使う分、借金が減らず、将来世代に負担が先送りされる。
首相は対策を「未来への投資」と位置づけた。しかし、未来へのつけが膨らんでしまえば本末転倒だ》(12月6日付毎日新聞社説)
《大規模な経済対策の一方で、19年度の税収は当初見込みを下回る見通しとなっている。国の借金が1000兆円を超える厳しい財政事情を忘れてはならない。
25年度に基礎的財政収支を黒字化する財政再建目標の達成に向けて、歳出改革が急がれる》(同、読売社説)
単式簿記の負債だけを見て<危機的>などというのは馬鹿である。複式簿記を導入して資産と負債を秤量すれば<危機的>でないことはすぐ分かるはずである。