保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

国債増発とインフレについて(1) ~国債がただの紙切れになると煽る人達~

近年の国債増発が戦時下と似通っているとして問題視する向きがある。

 大東亜・太平洋戦争直前の1941(昭和16)年、隣組読本『戦費と国債』なる大政翼賛会制作の冊子が国民に配られた。

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  このように<心配は全然無い>と言っていた国債が戦後紙切れ同然となってしまったという苦い経験がある。翻(ひるがえ)って、現在日本はGDPの2倍を超える債務残高があるとされ、戦時下の状況と重なるのである。

 が、敗戦直後は、国債を「償還」しようとした(借りていたお金を返そうとした)ことに問題があった。大量の国債を償還しようとすれば、大幅な増税か「超インフレ」(hyperinflation)しか手段がない。大幅な増税なく償還しようとしたために「超インフレ」となり、国債が紙切れと化してしまったのである。

 この経験を踏まえて言えば、現在の山となす国債は無理矢理償還しようとするなということになる。つまり、償還などせずに借り換えれば良いということである。こうすれば、大増税も不要であるし、超インフレも起こらない。

 が、唯一気を付けなければならないのは、貨幣供給が行き過ぎて貨幣価値が大幅に下がり「超インフレ」にならないかということである。今のようなデフレ状態においてはまったく問題ないと言えるだろうが、デフレからインフレ模様に振れた時にはやや注意が必要だろう。この場合、景気が過熱しすぎないよう景気抑制策を打つ必要も出て来るかもしれない。

 が、現在の経済学に「公式」があるわけもなく匙加減はむずかしい。増税をどの段階で、どの程度の規模で行うのかということになるわけだが、こればかりは状況次第としか言い様がない。謂(い)わば「出たとこ勝負」ということになってしまうのだが、このような言い方をすれば不安に思う人もいるだろう。が、未曽有(うぞう)の状況を切り拓く新たな経済理論を打ち立てるつもりで事にあたるべきだと思われる。

 だからであろう、MMT(現代貨幣理論)を批判する人の中に、日本はこの理論の「実験場」と化しているという人もいる。が、

《オーストラリア・ニューカッスル大学のビル・ミッチェル教授は「日本をMMTの実験場にする気はない」との麻生大臣の過去の発言について、「MMTは政策ではなく概念で、実験場にするかどうかという話ではない」と主張しました》(テレ朝news2019/11/06 07:24)

 要は、先例がないということに過ぎないのである。したがって、急激な景気変動が起こらないように注意しつつも、先頭を走ることを怖れて、歳出を変に抑制しないようにするべきであろう。

《ミッチェル教授はさらに、国が借金をする際の制約は赤字額ではなくインフレにあるため、長い間、物価が低迷している日本ではもっと財政出動をするべきだとしています》(同)​【続】​