保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

来年度予算案を巡って(2) ~妄想に憑りつかれた新聞各紙~

11月28日放送のテレビ討論番組「朝まで生テレビ」において主流派の頭目竹中平蔵氏が衝撃発言を行った。

財政均衡論は間違いだったことが判った」

「戦争でも起こらない限り供給能力は維持されているのでインフレにはならない」

「現状なら100兆円の赤字国債を発行しても問題は起こらない」

(参照:​自由人「全世界が認めつつある『MMT(現代貨幣理論)』」​:BLOGS 2020年11月29日15:23)

《25年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標は有名無実となってしまった。優先度の低い事業はやめ、必要な事業の財源をきちんと確保する。そんな基本を忘れていては、財政の健全化など望むべくもない》(朝日社説)

 竹中氏も認めてしまったのである。<基礎的財政収支>(primary balance)に意固地に拘(こだわ)る必要はない。

 コロナ禍下においては、出来るだけ必要なところにお金が行き渡るように目配りすることを優先すべきであって、<優先度の低い事業>を精査しお金を出し渋るなど、もはや人の心が分からぬ独善でしかないだろう。

アベノミクスは、政府が予算を大盤振る舞いし、日銀が国債を事実上買い支えた。菅政権も継承したのなら危機感がなさすぎる。

 急速な高齢化が進む中、借金まみれのままでは、社会保障制度に対する国民の不安が高まる。財布のひもがさらに締められ、景気回復の足かせとなる恐れがある》(毎日社説)

 アベノミクス金融緩和の何がどう問題であったのかを分析もせず、ただ借金が増えることをもって「危機」だと煽っても仕方がない。成程、国債を償還しようとすれば大増税が必要ということになり、将来世代は地獄を見ることにもなりかねない。が、国債は償還する必要はなく、借り換える形をとれば何の問題も起こらない。ただ超インフレが起こらないように気を付けておけばよいだけである。

 そもそも政府が国債を発行し、それを日銀が買い支えるという「儀式」を行うがゆえに政府の借金が増えているだけで、単に政府の「通貨発行権」を行使する形で、歳入を増やせばよいだけの話なのである。このやり方であれば、借金が増えることもない。そんな「打ち出の小槌」のような話はないと訝(いぶか)る人がほとんどであろうが、これの言い方を変えたのがMMTということになろう。

《消費税は今年度、個別の税収で初めて最大になる。コロナ禍でも国民に負担を求めている以上、政府は財政の無駄を省き、健全化の道筋を示す責任がある》(同)

 要は財政健全化路線を貫けということであるが、このコロナ禍下で経済を締め付けようとするのは異様である。が、多くの他紙社説も同様な妄想に憑(と)りつかれている。

《危機に際し財政の力強い後押しが必要なのは当然としても、極度に悪化した財政の現実から目をそらすことは許されない。

 このままでは、令和7年度の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標の達成も絶望的だろう。経済環境が激変する中で財政をどう立て直すのか》(産經主張)

《国の21年度の基礎的財政収支は20兆円超の赤字となり、地方との合計で25年度に黒字化するという目標の達成はもはや絶望的だ。国・地方の21年度末の長期債務残高は1200兆円超に膨らむ。

たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる》(日経社説)

《あくまでコロナ禍という非常事態を乗り切るための手段だ。いずれ収束した後、借金の山を減らさないと、ツケは次代に回る。

 懸念するのは非常時の対応が常態となり、財政規律が形骸化することだ》(神戸社説)​【了】​ (注)以上各紙社説は12月22日付。