保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

来年度予算案を巡って (1) ~<財政規律>という世迷い言~

各紙12月22日付社説は、菅政権が初めて編成した来年度予算案が過去最高の106兆円超となったことを取り上げている。

《財政規律のたがが外れてしまったと言うほかない…感染防止対策や失業防止のための休業支援などは理解できる。問題は、コロナ禍と関係が薄い事業まで続々と、どさくさに紛れて盛り込んだことだ》(12月22日付朝日新聞社説)

 が、今や金本位制でないのだから、<財政規律>は絶対守らねばならないわけではない。MMT(現代貨幣理論)が登場し、国債を発行し資金調達することの意味が変わったのである。

 勿論、<財政規律>を遵守(じゅんしゅ)しなければならないとする学説が存在することは分かる。それどころかそれが「主流派」と見做(みな)されてもいる。が、財政赤字が絶対悪であると言えるほど主流派経済学は絶対的なものではない。にもかかわらず、ただ<財政規律>を守れと言うのは自説の押し付けに過ぎないと弁(わきま)えるべきではないか。

《政府も与党も税金を扱っているという認識を失い、金銭感覚がまひしてしまったのではないか。

 東日本大震災の復興予算編成の際には、民主党政権の看板政策だった高速道路無料化が見直され、国家公務員の給与もカットされた。対照的に菅政権には、財源を捻出しようとする姿勢がみられない》(同)

 が、<高速道路無料化>が見直されたのは、東日本大震災復興にお金が必要になったからではない。高速道路を無料化すれば、料金所が不要になってしまうので、そこで働く職員から反対の声があがり、自治労を主要母体とする民主党が怯(ひる)んでしまったからであると私は記憶している。

 本来<高速道路無料化>は「地域主権」と絡(から)めて考えるべきものであろうが、「地域主権」という看板政策はその道筋すら示されはしなかった。当然のごとく<高速道路無料化>政策も萎(しぼ)んでしまい、「社会実験」などと称し一部の高速道路で実験を試みただけで尻窄(しりつぼ)みに終わってしまったのである。

 震災復興に日本の余力を集中してしまっては、全国が一律に落ち込んでしまい、むしろ復興の活力を衰弱させてしまったと言うべきである。これは明らかな「失政」だった。その認識がないから、朝日社説子はこんな素っ頓狂なことが書けるのである。

《財源を気にしなければ、予算は野放図に膨らむばかりだ。

 来年度末の国債発行残高は1千兆円に迫る見通しだ。日本銀行による国債の大量購入という異例の政策に頼って、次世代に借金のツケを回し続けるのは、あまりに無責任である》(同)

 MMT理論からすれば、赤字国債は次世代への借金の付け回しではない。政府の借金が国民の所得に転じているだけであれば「とんとん」でしかない。【続】