保守論客の独り言

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アベノミクス検証について(1) ~アベノ「ミックス」の蹉跌(さてつ)~

各紙社説が安倍政権最大の看板政策「アベノミクス」の検証というか再批判を行っている。

《安倍政権はまず、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を掲げた。金融政策手法の「異次元」さこそ際だったが、この「3本の矢」自体は不況期の標準的な政策メニューといえる》(8月30日付朝日新聞社説)

 「3本の矢」を<不況期の標準的な政策メニュー>などと言ってアベノミクスの価値を下げることに必死である。が、標準的というのなら第2次安倍政権前の民主党政権はどうしてのこの<標準的な政策>すら採らなかったのか。やはり、民主党政権は「悪夢のような政権」だったということなのか。

《12年当時、円相場は1ドル=80円前後で、日経平均株価は8000円台と低迷していた。

 安倍首相はデフレ脱却と輸出企業に不利な円高の是正を掲げ、日銀が大きな役割を担った。

 「物価上昇率2%」を目標に、日銀に国債買い入れの拡大を促す大規模な金融緩和を推進。現在は1ドル=105円前後の円安水準で、株価は今も2万3000円前後で推移している。

 円安は自動車、電機業界の業績改善を後押しし、大手を中心に賃上げが広がった。日本を訪れる外国人観光客も増え、観光や小売業界を潤した》(9月3日付南日本新聞社説)

 一方、朝日社説子はもっと辛口である

《世界経済の復調という追い風もあり、円高の行き過ぎが修正されて企業業績が回復。雇用も好転し、物価もいったんは上昇基調に乗ったかに見えた。

 だが、ならしてみれば成果は限られる。19年度までの経済成長率は年度平均で実質1%、名目1・6%程度。目標とした実質2%、名目3%の半分に過ぎない。異次元緩和の「出口」でのコストが増す一方、物価上昇率目標の2%には程遠い》(同、朝日社説)

 ではどうして結果が出なかったのか。朝日に限らずこのことをちゃんと分析している社説は見当たらない。

 私は当初からアベノミクス3本の矢は並び立たぬと主張してきた。金融政策、財政政策、成長戦略はそれぞれ、経済学の泰斗フリードマンケインズシュンペーターの学説に基づくものであろう。これら意図の異なる学説を寄せ集め「アベノミックス」しても、うまく機能しないだろうというのが私の予見するところであった。

 もう少し具体的に分析してみよう。アベノミクスは「3本の矢」という掛け声とは裏腹に、実際は金融政策以外うまく機能しなかった。

 異次元金融緩和によって円安・株高となり、企業業績は改善し、雇用状況も好転した。これに積極的な財政政策が加わればさらなる回復が見込めたはずなのに、そうはならなかった。それは「財政健全化」という亡霊に憑(と)りつかれていたからである。

 経済が拡大するにつれて財政規模も拡大しなければならない。つまり、通貨発行権を用いて政府は貨幣供給量を増やす必要があった。にもかかわらず、単式簿記での債務残高の大きさに怖気(おじけ)付き、積極財政を封印し、挙句の果てには増税まで実施してしまった。【続】