保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

国債増発とインフレについて(2) ~課税方法としてのインフレ~

Lenin is said to have declared that the best way to destroy the Capitalist System was to debauch the currency. By a continuing process of inflation, Governments can confiscate, secretly and unobserved, an important part of the wealth of their citizens.

レーニンは、資本主義制度を破壊する最善策は通貨を下落させることと断じたと言われている。インフレが継続的に進行することによって、政府は、密かに気づかれることなく、市民の富の重要な部分を没収できる)

By this method they not only confiscate, but they confiscate arbitrarily; and, while the process impoverishes many, it actually enriches some. The sight of this arbitrary rearrangement of riches strikes not only at security, but at confidence in the equity of the existing distribution of wealth.

(この方法によって、政府はただ没収するだけでなく恣意的に没収する。そしてこの過程は多くを貧困化する一方、実は一部を裕福にする。このような恣意的な豊かさの再配分を見れば、現行の富の分配の公平さにおける安心だけでなく信頼も揺らぐ)

Those to whom the system brings windfalls, beyond their deserts and even beyond their expectations or desires, become "profiteers," who are the object of the hatred of the bourgeoisie, whom the inflationism has impoverished, not less than of the proletariat.

(この制度によって、相応の報い以上の、しかも自分たちの期待や欲求をも上回る思いがけない大きな収入を手にする人々は「暴利を貪る者」となり、プロレタリアート以上に、通貨膨張論のために窮乏化したブルジョアジーの憎悪の的となろう)

As the inflation proceeds and the real value of the currency fluctuates wildly from month to month, all permanent relations between debtors and creditors, which form the ultimate foundation of capitalism, become so utterly disordered as to be almost meaningless; and the process of wealth-getting degenerates into a gamble and a lottery.

(インフレが進行し、通貨の実質価値が月毎に大きく変動すると、資本主義の究極的根幹をなす債務者と債権者とのすべての恒久的関係は大混乱を来しほぼ無意味になる。そして富を得る一連の行為は、賭けやくじ引きへと堕落する)

Lenin was certainly right. There is no subtler, no surer means of overturning the existing basis of Society than to debauch the currency. The process engages all the hidden forces of economic law on the side of destruction, and does it in a manner which not one man in a million is able to diagnose.

レーニンは確かに正しかった。通貨を堕落させること以上に既存の社会基盤を覆す巧妙な、確実な手段はない。この一連の過程は、目に見えぬ経済法則の力のすべてを破壊の側に付かせ、100万人に1人も診断できないやり方でそれを行うのである)

-- John Maynard Keynes, Essays in Persuasion: II Inflation and Deflation: I Inflation (1919)

ジョン・メイナード・ケインズ『説得論集』: II インフレーションとデフレーション: I インフレーション)

 レーニン言うところの「インフレによって市民の富を没収する」とは、「インフレは徴税と同じ効果をもつ」ということである。そしてインフレを人工的に作る。それが「お札を刷る」ということである。

《政府というものは、紙幣の印刷によって長期間存続することが可能である。つまり、政府は課税によって獲得できると同様の実質資源を、この方法により入手することができる。この方法は非難を受けるけれども、その効果はある程度まで認められる。政府はほかに方法がない場合、この方法で存続することができる。これは、国民が逃れることが最もむずかしい課税の形であり、また、他には何も実施することのできぬ弱い政府でも実施できる課税である》(ケインズ「課税方法としてのインフレーション」:『ケインズ全集』(東洋経済新報社)中内恒夫訳:第4巻 貨幣改革論 第2章 財政と貨幣価値の変化、p. 38)​【続】​