保守論客の独り言

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安倍首相のトランプ氏ノーベル平和賞推薦について(1) ~「ノーベル平和賞」の意味~

《先週のホワイトハウスでの記者会見で、北朝鮮との緊張緩和を理由に「安倍首相からノーベル平和賞に推薦された」と明らかにした。

 トランプ氏によれば、安倍首相からノーベル賞委員会に送った5ページの書簡の写しを渡され、「日本を代表して、謹んであなたを推薦した」と伝えられたという。

 推薦理由についてトランプ氏は「日本上空をロケットやミサイルが飛ばなくなり、警報も鳴らなくなったからだ。日本国民は安心を感じている。私のおかげだ」と語った》(2月19日付毎日新聞社説)

 この推薦がまったく馬鹿げていることは言うまでもない。が、米国から推薦を要請されれば安倍首相が断れないのもまた言うまでもない。

《安倍首相は本気で、トランプ米大統領ノーベル平和賞にふさわしいと考えているのか。外交辞令では済まされぬ、露骨なお追従(ついしょう)というほかない》(2月19日付朝日新聞社説)

 安倍晋三首相が、トランプ大統領ノーベル平和賞に相応しいと思っているかどうかは、ノーベル平和賞をどう見ているのかによるだろう。ノーベル平和賞を政治的駆け引きの道具と見るのなら相応しいとも言えるし、本当に平和構築に寄与した人や団体に与えられるものと見るのなら相応しくはないとも言えるだろう。

 が、一体何をもって平和構築に寄与したと言えるのかと問われれば答えは簡単ではない。

《09年に平和賞を受けたオバマ米大統領は、「核なき世界」に向けた決意を示し、世界に理想の力を再認識させた。それに対しトランプ氏は、偏狭な「米国第一」主義に走り、地球温暖化防止のためのパリ協定など、国際協調の枠組みに次々と背を向け、核軍拡にも踏み出そうとしている。とても平和賞に値するとは思えない》(同)

 戦後日本の空想的平和主義の発想からすれば、オバマ氏は受賞に値し、トランプ氏は受賞に値しないということになるのだろう。が、オバマ氏は一体どのような貢献をしたと言うのであろうか。ただ非現実的な「核なき世界」を表明しただけではないか。その後、オバマ氏が「核なき世界」に向けて不撓(ふぎょう)不屈の精神を貫いたなどということはない。

《米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は27日、広島で「核兵器なき世界」の実現を訴えたオバマ大統領の政権下で、核兵器削減のペースがブッシュ前政権など冷戦後のどの政権よりも鈍化したと報じた。「オバマ氏が掲げる理想と現実のギャップを表している」と指摘した。

 米国防総省の公表資料によると、廃棄待ちや退役済みを含まない核弾頭は2000年9月末に1万577個だったが、08年9月末までに5273個まで減った。ブッシュ前政権の8年間で半分近くに削減された。

 これに対し、オバマ政権下の15年9月末の核弾頭数は4571個と、08年9月末からの削減数は702個にとどまった。オバマ政権の削減数はブッシュ前政権の7分の1ほどだった。軍事専門家はオバマ政権の削減は「冷戦後のどの政権よりも少ない」とした》(産経新聞ニュース 2016.5.28 11:15)【続】