保守論客の独り言

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安倍首相のトランプ氏ノーベル平和賞推薦について(2) ~トランプ氏へのノーベル平和賞授与はなくはない~

毎日新聞余録は、トランプ氏に似た人物として古代ローマの皇帝ネロを持ち出す。

《自分を竪琴(たてごと)と歌の名手と信じていたが、史書は「声は小さく、しわがれていた」と記す▲…自分に拍手喝采(はくしゅかっさい)させる5000人の若者を組織した。ネロが延々と歌っている時は劇場から出るのを禁止され、ある女性は客席で出産した。死んだふりをして棺桶(かんおけ)で運び出してもらう人も続出したとか▲しかし皇帝とあらば「神の声を聞きたい」とへつらう人も出てくる。ギリシャの属州が竪琴奏者の栄冠をネロに贈ると「ギリシャ人だけが音楽を聴く耳を持つ」とご機嫌だった。後に彼は属州に自由を与え、礼金を贈ると発表した》(2月19日付毎日新聞余録)

 そして

《国家非常事態宣言で議会承認なしに国境の壁の建設費を支出する、まさに皇帝並み権力を振るうトランプ米大統領だ》(同)

と言う。が、トランプ氏は、曲がりなりにも規則にのっとって政策遂行しようとしているのであるから、ネロに比されるのはむしろ北朝鮮金正恩氏の方ではないか。

 が、強権発動という点においては「五十歩百歩」であり、その意味でトランプ氏と金正恩氏は似た者同士と言えなくもない。だとすれば、安倍首相はもしも要請があれば、金正恩氏もノーベル平和賞に推薦しなければならないなどということにもなりかねない。何せ最近北朝鮮は日本に向けてミサイルを撃たなくなった、つまり、日本は平和になったというのがその理由である。

 冗談はそれくらいにして、北朝鮮がミサイルを撃たなくなったのは、米国との交渉ゆえなのだろうか。米朝交渉以外にも幾つか仮説が立つ。

 まず、財政的問題である。これまではミサイルを撃つぞと関係国を威嚇して「人道的支援」などを得てきたが、そのような脅しが利かなくなってしまったということが挙げられる。つまり、ミサイル発射が割に合わなくなったということである。

 次に、新たなミサイルを開発し、これをイランなどの国に売り込むというのも、国連制裁下においては難しくなっている。否、ミサイル開発自体が行き詰まったと言うべきか。日本の1つの県程度の経済規模の国で世界の先端を行くような技術開発を行うのはあまりにも無理がある。

 が、秘策中の秘策は、中国やロシアへの依存を脱し米国側に寝返るというものである。身近な例としてはベトナムがある。社会主義を掲げながら自由経済を取り入れる北朝鮮版「ドイモイ政策」のようなものを目指すということである。

 米朝会談がどのような方向に向かうのかは分からないが、もし本当に北朝鮮が寝返り、朝鮮半島の統一が成れば、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞しても誰も文句は言えまい。

 実績というよりも期待を込めて贈られることの多い賞であるから、トランプ氏にノーベル平和賞を授与することが強(あなが)ち間違ったことではないとも言えなくもないような気がしないでもない。【了】