保守論客の独り言

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歴代最長安倍政権について(1) ~批判にならない朝日の批判~

取り上げるのが遅れてしまったが、安倍政権が先月20日、歴代最長政権となった。

《安倍首相の通算在任日数がきょう2887日となり、明治・大正期に3度首相を務めた桂太郎を抜いて最長となった。短命に終わった第1次政権の後、12年12月に発足した第2次政権は7年近くに及ぶ》(1120日付朝日新聞社説)

 何事にも光と影がある。安倍政権は長期政権ゆえの「安定」もあれば「ゆるみ」もある。それらをどう評価するのか。

《第1次安倍政権以降、6年間で6人の首相が交代。とりわけ、政治の変化への期待を背負って政権交代を果たした民主党政権の混迷を目の当たりにした世論が、政治の安定を求めたことが背景にあるだろう》(同)

 果たしてそうだろうか。安倍晋三氏に対抗できる人材が与党にも野党にもいなかったことが長期政権となった最大の要因ではなかったか。

《確かに、アベノミクスの下で株高が進み、企業収益や雇用の改善につながった。しかし、賃金は伸び悩み、国民が広く恩恵を実感できる状況にはなっていない》(同)

 こんな表層的な批判では批判にならない。アベノミクス当初の「3本の矢」の話はとうに頓挫(とんざ)している。微(かす)かに命脈を保っているのが金融政策だけである。が、金融緩和はこれまで日本を牽引(けんいん)してきた自動車や白物家電産業を生き残らせ失業者を出さないための政策に過ぎず、先がない。

 「物づくり」から「価値づくり」に産業の構造転換を図らねばならなかったのに、斜陽産業を温存することを優先し、転換の芽を摘んでしまった。私はこれが残念でならない。

《また、安定した政治基盤を生かして、少子高齢化などの難題に、正面から切り込んできたとも言い難い。長期在任で育んだ外国首脳との個人的な関係も、どれほど具体的な成果につながったであろう》(同)

 <少子高齢化>の問題も、少子高齢化を食い止めるという意味なら、そもそも政治が介入したくらいでこれが解消されるような話ではないのだから、<正面から切り込>むかどうかを問うても始まらない。

 否、そもそも<少子高齢化>の難題に取り組むことを宣言したのは安倍政権自身なのであるから、批判されて然(しか)りなのではあるが、ではどうするのかについての「見取り図」もなしにただブー垂れているのはただの「足手纏(まと)い」にしかならないだろう。

《長期政権がもたらした弊害は明らかだ。平成の政治改革の結果、政党では党首に、政府では首相に、権限が集中したことが拍車をかけた。自民党内からは闊達(かったつ)な議論が失われ、政府内でも官僚による忖度(そんたく)がはびこるようになった》(同)

 確かに、野党が森友だ加計だ桜だと頓珍漢なことばかり言っている以上、与党がもっとしっかりしなければならないのであるが、肝心の自民党の不活性も甚だしい。が、これは長期政権の<弊害>もあろうが、大きくは<平成の政治改革>の失敗からくるものではないか。

 小選挙区制によって候補者個人よりも政党を選ぶ形となり、政治家個人の資質特性が問われなくなったのが最大の問題である。ここには「議論を忘れた政治家」の姿がある。【続】