保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

安倍前首相の好意的評価について(2) ~戦後を最も代表する安倍前首相~

満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました》(平成27年8月14日内閣総理大臣談話)

 <国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」>って何だ。成程、欧州大戦(第1次世界大戦)後「パリ不戦条約」のようなものは出来た。が、この条約によって戦争が抑止されはしなかった。つまり有名無実の条約でしかなかったということである。

 満洲事変にしても、進むべき進路を誤ったと決め付けるのには疑義がある。実際、「リットン報告書」も、一方的に日本を非難するようなものとはなっていない。

《問題は極度に複雑だから、いっさいの事実とその歴史的背景について十分な知識をもったものだけがこの問題に関して決定的な意見を表明する資格があるというべきだ。この紛争は、一国が国際連盟規約の提供する調停の機会をあらかじめ十分に利用し尽くさずに、他の一国に宣戦を布告したといった性質の事件ではない。また一国の国境が隣接国の武装軍隊によって侵略されたといったような簡単な事件でもない。なぜなら満洲においては、世界の他の地域に類例を見ないような多くの特殊事情があるからだ》(『全文リットン報告書』(ビジネス社)渡部昇一解説・編、p. 306)

 そもそも安倍談話を出す必要があったのかという問題がある。屋上屋を架すわけにはいかないのであるから、出すのであれば村山談話を上書き修正するものでなければ意味がない。が、上書き修正すれば関係国は黙っていないだろう。関係国が大して騒がなかったということは上書き修正に値する内容ではなかったということの証左である。

《約200年ぶりとなる天皇の退位(譲位)に伴う御代替わり(2019年)の諸行事を恙(つつが)なく執り行い、戦後が始まった昭和の次の次の時代の幕を開けた》(【世界のかたち、日本のかたち】:産経ニュース2020.10.19 08:00

 これも私は真逆の認識である。陛下が退位を望まれればこれを認めるという悪しき前例が出来てしまったということになる。今後場合によっては、陛下に退位いただくべく政治圧力を掛けるなどということも起こらないとも限らない。

 勿論、これが議論を積み重ね、いかなる場合に退位が認められるのかが明確となり、皇室典範を改正するというのであれば問題はない。が、陛下が皇室典範にない退位を言い出された後、議論もそこそこに特例措置として退位を歴史伝統に依拠するというよりも政治的に認めてしまったのは大きな汚点であったと言わざるを得ない。また、退位後もこのことについて皇室典範を改正しようという動きもない。このようなことが認められるわけがないではないか。

 坂元教授は

《安倍前首相は「戦後を終わらせた首相」として歴史に名を残すだろう》(同)

と言う。が、むしろ私には戦後を最も代表する政治家、それが安倍晋三前首相ではなかったかと思われるのである。【了】