《長期政権は「安倍一強」とも呼ばれる政治状況を生み、与党議員や官僚らの間に、首相ら政権中枢に過度に配慮する忖度(そんたく)をはびこらせた。
格安での国有地売却が問題視された森友学園を巡る問題では、官僚機構のトップとして君臨してきた財務官僚が、公文書偽造に手を染めるにまで至った。
首相と親密な関係にある加計学園の大学の獣医学部新設を巡る疑惑や、公的行事である「桜を見る会」の私物化問題も、一強に起因する弊害と言えるだろう。
法務官僚の違法な賭けマージャンや、財務次官の女性記者セクハラ行為など「統治機構の根腐れ」ともいえる深刻な状況も生んだ。
後継首相は、こうした憲法を軽んじ、統治機構の根腐れを生んだ「安倍政治」を、どう転換するのかも問われることになるだろう》(8月29日付東京新聞社説)
<安倍一強>は安倍首相が強かったからというよりも、野党およびマスコミが弱すぎた、つまり、「多弱」によって生じたものとも考えられる。マスコミにはそういう自覚はないのだろうか。
いちいち記事に反論する余裕はないが、例えば森友学園土地売却問題は、この土地が不法ごみ投棄がなされてきた池を埋め立てて整地したものであるので、将来瑕疵(かし)担保責任が問われかねない物件であった。これを免責することを条件として1億3400万円で売り抜けているのであるから、財務省近畿理財局が責められるような話ではない。すぐ隣の土地は豊中市に売却されているが、補助金等を差し引いた金額が2千万円であったことを考えれば<格安>と呼べるようなものでもなかった。
そういう都合の悪い情報は隠し、安倍首相が疑惑に答えないのは不誠実だなどと難じるのはただの言い掛かりである。
《第2次内閣発足以降、デフレ脱却の経済政策「アベノミクス」を推進した。名目国内総生産(GDP)600兆円の目標を掲げたが、達成していない。財政健全化のための基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年黒字化は先送り。指導的役割を占める女性の割合が20年に「30%」という「女性活躍」目標も達成せず。北方領土問題や拉致問題は解決できなかった》(8月29日付琉球新報社説)
問題点を列挙して終わりでいいのなら楽なものである。何がどう問題なのか、改善案はあるのかないのか、そういったことを付記しなければ意味がない。
GDP600兆円、基礎的財政収支黒字化、女性指導者30%といったものは、そもそも課題の設定法が間違っていたのではないか。例えば、基礎的財政収支黒字化の話は「緊縮財政」となり、経済成長の足かせとなる。つまり、この2つは矛盾しているのである。否、そもそも日本のように経済が熟した国においてGDPという経済指標を用いて目標設定することは妥当なのかというような問題もある。【続】