保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

安倍首相退陣表明について(2) ~裏のある得手勝手な批判~

《選挙で得た数の力に物言わせて進めたのは、国民の知る権利を脅かす特定秘密保護法集団的自衛権の行使を認める安全保障法制の制定だった。

 治安維持法の再来とされる「共謀罪」法も忘れてはならない。

 いずれも国民に正面から訴えて信任されたとは言えない政策であり、憲法違反との指摘が根強い。

 憲法に基づいて政治を進める立憲主義の原則を破壊し、戦後民主主義の土台を掘り崩すこれらの悪法は、平和国家の将来に大きな禍根を残したと言わざるを得ない》(8月29日付北海道新聞社説)

 北海道社説子は特定秘密保護法を<国民の知る権利を脅(おびや)かす>と言って脅(おど)すけれども、これでは国民の知る権利の名を借りて日本を「スパイ天国」のまま置いておきたいという話でしかない。日本の安全保障に関する秘密情報が他国に筒抜けであってよいはずがない。

 検討されるべきは、この法律と国民の知る権利の「平衡」をどのように取るのかということである。一方に偏した話には何か裏があるのではないかと疑ってみることも大切である。

 <治安維持法の再来とされる「共謀罪」法>という言い方も親左翼的である。「共謀罪」と左派は言い、「テロ等準備罪」と右派は呼ぶ。左派が「共謀罪」と言うのは戦前の軍国主義を国民に想起させたいからであろう。だから<治安維持法>を持ち出すのである。

 戦後教育を受けた者は、ほとんどが<治安維持法>を「悪法」と見做しているのだろうが、<治安維持法>はその名の通り、治安を維持するための法律である。

治安維持法によって共産主義社会主義的極右以外の思想も弾圧されたことは、まことに遺憾であるし、いくらでも反省の余地がある。だが、暴力革命を目指した戦前の日本共産党に対する措置は別なのだということが、あまりにも言われなさすぎた》(渡部昇一『「日本の歴史」6 昭和篇:「昭和の大戦」への道』(WAC)、p. 82)

 「共謀罪」法だと騒いでいる人達は、未だ<暴力革命>を夢みている可能性があることを忘れてはならない。

 《外交・安全保障分野では、首脳間の関係を深めるのに長期政権が役立った側面はあるが、「戦後日本外交の総決算」をスローガンに取り組んだ北方領土交渉は暗礁に乗り上げ、拉致問題も前進はみられなかった》(8月29日付朝日新聞社説)

 北方領土返還、拉致問題解決はどちらも外交交渉によって解決できるようなものではないことなど誰もが知っていることである。が、解決できないと言って政治家が放り出すわけにはいかないのであるから、たとえ1ミリも進展が見られなかったからといっても軽々に非難すべきものではない。

《政策決定においては、内閣に人事権を握られた官僚の忖度(そんたく)がはびこり、財務省の公文書改ざんという、民主主義の土台を崩す前代未聞の事態を招いたことを忘れるわけにはいかない》(同)

 集団ある限り忖度はなくならない。にもかかわらず、安倍政権にだけ忖度が蔓延(はびこ)ったかのように言うのは間違っている。公文書の改竄にしても、安倍政権固有の話というよりは、この役人の意識が不正を許すような低水準であっただけである。それが分かっていて<民主主義の土台を崩す前代未聞の事態>などと大袈裟に批判するのは勝手である。【続】