保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

安倍首相退陣表明について(1) ~最後まで難癖を付ける各紙社説~

安倍晋三首相が体調の悪化を理由に辞意を表明した。これを受け各紙社説は安倍政権の総括を行っている。が、権力批判は「正義」とばかりに罵詈雑言(ばりぞうごん)が飛び交っている。口角泡を飛ばす姿は、もはや「病的」と言うに相応しい。

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《首相在任7年8カ月、「安倍1強」と言われた長期政権の突然の幕切れである。この間、深く傷つけられた日本の民主主義を立て直す一歩としなければならない》(8月29日付朝日新聞社説)

 民主主義教の信者にはある種の「理想郷」が見えているのかもしれないが、そんなものは現実には存在しない。自分たちが夢見る「理想」を基準にし現実を否定されても傍迷惑(はためいわく)なだけである。

《長期政権のおごりや緩みから、政治的にも、政策的にも行き詰まり、民心が離れつつあったのも事実である。

 先の通常国会では、「桜を見る会」の私物化が厳しく追及された。公文書改ざんを強いられて自ら命を絶った近畿財務局職員の手記が明らかになったことで、森友問題も再燃した。

 河井克行前法相と妻の案里参院議員による大規模な買収事件が摘発され、選挙戦に異例のてこ入れをした政権の責任も問われている。検察官の独立性・中立性を脅かすと指摘された検察庁法改正案は、世論の強い反対で廃案に追い込まれた。

 それに加え、コロナ禍への対応である。首相が旗を振っても広がらないPCR検査、世論と乖離(かいり)したアベノマスクの配布、感染が再燃するなかでの「Go To トラベル」の見切り発車……》(同)

 これらの多くは「難癖」であり「いちゃもん」である。百歩譲ってこのような問題があったのだとしよう。が、このような「瑣事」(さじ)に多くの時間を費やされ、日本の政治は停滞を余儀なくされたのであった。

 瑣事は言挙げするに値しないと言いたいわけではない。「お灸を据える」程度であれば大いにやればよい。が、本来枝葉末節(しようまっせつ)に属するようなことを「疑念」という膨らし粉でぱんぱんに膨らませ、政権批判を能(あた)う限り逞(たくま)しくするペテンに付き合わされるのは真っ平御免である。

《当初から掲げた経済政策「アベノミクス」は大規模金融緩和と機動的な財政出動、成長戦略を「三本の矢」と称し、デフレからの脱却を目指した。

 金融緩和は円安と株価上昇を生みだし、海外経済に後押しされて国内企業の業績は改善。大企業や富裕層に恩恵をもたらした。

 一方で、労働者の賃金は思うように上昇せず、国内消費は上向かないままだ。デフレ脱却は道半ばで、非正規労働者の増加は国民の格差拡大をもたらした。

 政権は求人倍率など成果を強調するだけだった》(8月29日付信濃毎日新聞社説)

 確かにそうなのだが、ではどうしてアベノミクスの下で賃金が伸び悩んだのか。アベノミクスに問題があるからなのか。だとすればアベノミクスのどこに問題があるのか。否、そもそもアベノミクスとは何だったのか。そういったことに切り込まなければ生産的議論は望めない。【続】