保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

安倍首相退陣表明について(4) ~哲学無き政権運営~

《第2次安倍政権は、国民に次々と期待を振りまく政策を展開した。

 発足早々、大規模な金融緩和や財政出動など「三本の矢」からなる「アベノミクス」でデフレ脱却を掲げ、経済成長への期待から株価は上昇した。円高傾向も反転した。

 だが実質所得は伸びず、首相が景気回復を唱えても多くの国民は実感を持てない。そこで政権は「女性活躍」「人づくり革命」「1億総活躍」など看板の掛け替えを繰り返す》(8月29日付神戸新聞社説)

 こういった側面があったことを否定はしない。「キャッチコピー」先行の政治手法は「プレゼンテーション」流行りの現代にマッチするものであったろう。

 このような手法は人目を引くには一定の効果があるだろうし、「やってる感」も得られるだろう。が、こういったやり方は期待を高めては裏切ることを繰り返すだけである。何より寄せ集め観が強く、筋の通った「哲学」がない。

 「革命」という言葉を安易に用いるのも問題であった。やはり「革命」という言葉には左翼臭が漂い「破壊衝動」の影が射す。

森友・加計学園問題財務省の公文書改ざん、「桜を見る会」など、政権を巡る疑惑の多さも異例だ》(同)

 果たして<異例>なのは安倍政権の疑惑の多さなのか。むしろ<異例>なのは疑惑があると難癖を付け続けた野党やマスコミの方なのではないか。難癖など付けようと思えば幾らでも付けられる。実際、野党とマスコミは安倍政権に難癖を付け続けた。この「異様さ」を客観視できないところに反安倍連の病巣(びょうそう)がある。

《長期政権の最大の功績は、不安定だった政治を立て直したことである。民主党政権は、党内でもめ事が絶えず、「決められない政治」と揶揄(やゆ)された。

 首相に返り咲いて以降、経済再生を最優先に掲げ、大胆な金融緩和や積極的な財政出動によって、景気を回復軌道に乗せた》(8月29日付読売新聞社説)

 このように読売社説子は安倍政権を評価しているかのように見える。が、その実(じつ)は「自画自賛」ではないか。自分たちの主張が通り、浮かれているかのようである。

《緊迫する安全保障環境の中で、日米同盟を基軸として政策を見直したことも評価されよう。

 集団的自衛権の限定的な行使を容認し、安保関連法を成立させた。対日防衛義務を定めた日米安保条約の実効性を上げようとした首相の考え方は、理にかなう。

 各国首脳と良好な関係を築き、国際社会で存在感を示した。首相が毎年のように代わるようでは、こうはいくまい》(同)

 が、これでは対米従属の檻の中での成功を喜んでいるだけではないか。確かに「悪夢のような民主党政権」よりはるかにましではあろうが、米国あっての日本のような関係は今後どこかで変更すべきであるし、変更を余儀なくされる可能性は少なくないだろう。【続】