保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

安倍首相退陣表明について(5) ~小人閑居して不善を為す~

《新型コロナの流行への対応は、ちぐはぐだったと言わざるを得ない。

 2次にわたる大規模な補正予算で様々な給付措置を実現したものの、煩雑な手続きや、支給の遅れに批判が集中した。マスクの一律配付や、首相が寛(くつろ)ぐ動画の配信に、違和感を覚えた人は多い》(8月29日付読売新聞社説)

 給付金の問題は、左寄りの人達の反対で「マイナンバー」の普及が遅れたことが最大の原因である。マスクの件も、買い占め等によってマスクが手に入らない国民の不安や不満を解消する政治的意味合いが強かった。動画に至っては、こんないちゃもんを付ける人は心根(こころね)が卑しいと言わざるを得ない。

《総じて安定した国政運営だった。

 安倍政権の業績は、歴代自民党内閣の中でも著しい。

 第1次内閣では、教育基本法を改正し、「わが国と郷土を愛する態度を養う」という理念を盛り込んだ。憲法改正の是非を決める国民投票法を成立させ、国民の権利を実質的に広げた。

 再登板した第2次内閣では、前の民主党政権が不安定にした同盟国米国との関係を立て直した。

 安全保障環境の悪化に備えるため憲法解釈を見直し、集団的自衛権の限定行使を容認する安全保障関連法を制定した。国家安全保障会議(NSC)創設なども含め、厳しさを増す安全保障環境の中で国民の安全を守ってきた。

 法の支配や自由貿易を守る世界の有力指導者と目された。トランプ米大統領と良好な関係を築き、「自由で開かれたインド太平洋」構想を日米共通の戦略に仕上げた。米国が離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も11カ国での発効にこぎつけた。

 202年ぶりの譲位による天皇陛下の御代(みよ)替わりを支えた。デフレ脱却を掲げてアベノミクスを打ち出し、雇用改善につなげた。社会保障財源を確保するため、政治的に困難な消費税率引き上げを2度にわたって行った》(8月29日付産經新聞主張)

 「モリ・カケ・桜」にこだわる「小人」(しょうじん)とは見ているところが違う。TPP発効や「自由で開かれたインド太平洋」構想など安倍首相が自由主義社会に残した足跡は決して小さくない。

《世界にポピュリズムの嵐が吹き荒れ、欧米でも首脳が次々と交代するなか、安倍首相が自由と市場経済のけん引役として存在感を示したことは間違いない。米国が離脱し、漂流しかかった環太平洋経済連携協定(TPP)も11カ国の枠組みで発効に持ち込んだ》(8月29日付日本経済新聞社説)

 単に経済だけではなく安全保障においてもTPPをもっと戦略的に活用することが出来たのではないかと若干残念に思われるところでもあるけれども、国内でこれほど足を引っ張る者たちがいる中で、よくここまで成果が出せたと素直に評価すべきであろう。本当にお疲れさまでした。【了】