保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

英国のEU離脱について(2) ~英国EU離脱後の成否のカギは日本にもある~

《国家主権を制限する一方で、国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来を通じて域内の経済的な繁栄の実現を目指す――。EUは世界史的な意味を持つプロジェクトである》(1月30日付日本経済新聞社説)

 確かに左方面からすれば<EUは世界史的な意味を持つプロジェクト>なのであろう。が、EUは前世紀、共産主義国構築を目指したソ連邦の失敗を再び繰り返すだけなのではないかと危惧される。

<国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来>は一見素晴らしき事のように思われるのかもしれない。が、このことによって「格差」が生じることは避けられない。自由によって生じた格差をEU各国は主体的に解消する政策を打てない。ギリシャ危機もそこに問題の根っ子があった。

《目下、世界のあちこちでポピュリズム大衆迎合主義)が台頭し、協調と寛容に基づくグローバリズムの理念が揺らいでいる》(同)

 自分たちに都合の良いものは「民主主義」と言い、都合の悪いものは「ポピュリズム」と言っているだけではないのか。<協調と寛容>にしても、そこにはそうあらねばならぬという「不寛容」がある。

《そもそも離脱が英国の国益につながるのかも、疑問である。英国が戦後の長い経済停滞を脱して「欧州の病人」の汚名を返上したのは、EUの一員として統合の恩恵を享受してきたからだ》(同)

 まあ失礼な物言いである。どうしてこのような忌まわしい言葉を投げつけることが出来るのか。このあたりが、私が左寄り論者を好きになれないところである。

 おそらく日経社説子は<国益>を金銭的損得勘定だけで考えているのであろう。が、本当の意味の「国益」とは金銭面だけで測れないものではないか。

 英国は、たとえ金銭的に損害を被ろうとも、主体的に国家を運営することの方を優先したのである。そこには英国の矜持があるに違いない。

 中国の影響が強くなってきているEUから英国が離脱することをどうしてもっと好意的に見られないのか。

《首都ロンドンは欧州の金融センターの地位を確立し、欧州単一市場の玄関口として日本をはじめ域外から最大の投資を呼び込んだ。その一方で欧州通貨統合には加わらず自国通貨を堅持したのは、柔軟な金融・通貨政策を担保するうえで正しい判断だった》(同)

 英国は自国通貨を堅持したのではなく、通貨危機が生じて統合条件を満たせなかっただけである。

《今回のEU離脱には、そうした利害得失を織り込んだ長期戦略の視点が欠けている》(同)

 どうしてこれほど上から目線で物が言えるのか。私はむしろ長期的にはEU離脱は正しかったということになる可能性が高いと思っている。実は英国は、

《日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にも意欲を示している》(同)

 英国のEU離脱後の成否は、日本にもかかっているのである。TPPは独り経済的なものだけではない。安全保障上も重要な協定である。日本はもっと積極的にTPPの枠組みを活用し、世界基準を自ら構築するぐらいの気概を持つべきであろうと私は思うのであるが…【了】