保守論客の独り言

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「EU離脱」へ警鐘を鳴らす毎日新聞について

《英国人にとって通貨ポンドは、買い物の際に支払う「お金」以上の意味を持つ。独立した国家としてのアイデンティティーであり、国民の誇りである。他の欧州諸国と一線を画し、単一通貨ユーロに参加しなかった大きな理由だ》(810日付毎日新聞社説)

 英国は、誇り高き国であったから単一通貨EUROに参加しなかったのではなく、参加しようにも出来なかったのである。

 EU加盟国が独自通貨から共通通貨EUROに移行する際、各通貨の価格を一定の範囲内に固定しなければならないルールになっていた。しかしジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドが多額の英ポンド売りを行い、イングランド銀行がこれに対応できず、英ポンドの価格が大幅に下落してしまった。

 共通通貨EUROの参加条件(EMS)を満たせなくなった(ポンド危機)結果、共通通貨EUROに参加することが出来なくなってしまったのである。

《離脱が決まった2016年6月の国民投票前に比べ、ポンドは対ドルですでに18%以上、下落した。

 ジョンソン新首相となり、EUとの合意なき離脱がより現実味を帯びたことで、一時、収まっていたポンド売りが復活、加速した。史上最安値を更新する可能性も市場ではささやかれている。

 計画性のない離脱により、英国が失うEUの恩恵の大きさを、為替市場が警告していると見た方がよい》(同)

 実際このようにポンド安となっているのだとしても、「ほら、言わんこっちゃない」と英国を責め立てるのはどうか。英国がどうしてEUから離脱しようとしているのか、そのことが問われなければ意味がない。

 英国がEUを離脱するのは市場としては望ましくないとしてポンド安に振れるということは当然のことである。が、おそらくそんなことは織り込み済みであって、たとえポンド安になろうとも、英国がEUを離脱しようとしているのは、大きくは自分のことは自分で決めようとする「主体性」の回復にあったのだと思われる。

 今のポンド安の流れを今後のやり方次第でポンド高に戻すことも可能である。確かに煮え切らない離脱交渉を見ていると大丈夫かと心配にもなるが、大きな決断だけに時間が掛かるのも仕方がないことではある。

《EU離脱が強いる犠牲はあまりにも大きい。ジョンソン首相は、市場が発するシグナルに目を凝らし、売り物の楽観主義では乗り切れない現実をしっかり見据えるべきだ》(同)

 いつから毎日新聞市場原理主義者になったのであろうか。EU離脱は為替レートだけをみて決めるような薄っぺらな話ではない。経済的側面だけではなく、政治的側面、文化的側面、歴史的側面といったものを総合的に判断し決めるものである。

 ぺらっぺらな価値観を押し付けるような話ではない。