保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

迷走する英国のEU離脱問題について(2) ~英国の混迷に学べ~

《この1週間の英政界の混乱は極まった感がある。

 メイ首相がEUと合意した離脱協定案は、下院で与野党ともに反発が強い。承認の採決は見送られ、首相は議場とEU首脳との間で右往左往した。

 与党の強硬派はただ離脱を叫び、野党側には政権交代への思惑が透けてみえる。どちらも穏当な妥協案を示すこともなく、無責任のそしりを免れない。

 このままでは、「秩序なき離脱」が近づくだけだ》(12月17日付朝日新聞社説)

 朝日社説子が日頃の自分の振る舞いは棚に上げ、岡目八目よろしくこのようなことを書くのは笑止千万であろうが、言っていることはその通りである。

《対立の核心は、英領北アイルランドアイルランドの自由往来を維持する目的で、離脱協定案に盛り込まれた「安全策」にある。

 来年3月の離脱から2020年末までの移行期間中、英国とEUが北アイルランドの国境管理問題を解決できない場合、英国全体がEUの関税同盟に残るか、移行期間を延長するという内容だ。

 強硬離脱派は、英国が独自に関税同盟から抜けられないため、「EUのルールに永続的に従うことになる」と批判する》(12月16日付読売新聞社説)

 EUから離脱すれば北アイルランドの国境管理問題が再燃することは分かっていたはずであるが、このことが解決出来ないというのであれば離脱を白紙に戻すことも考えざるを得ないであろう。

 離脱ということで前に進もうにも進めない。かといって、いまさら離脱を撤回し残留するというわけにもいかない。まさに「前門の虎後門の狼」の状態にあるわけだが、「合意なき離脱」などということにならないように譲るべきは譲り、知恵の限りを絞るより他はない。

"Learn the wisdom of compromise, for it is better to bend a little than to break." ― Jane Wells

(妥協の知恵を学びなさい。壊すよりも少し折れる方がましだから)

《英国は文化やスポーツから、規制、選挙制度に至るまで、世界に影響を与えてきた。マニフェスト党首討論など英国の事例を参考に日本が取り入れたものは少なくない。

 経済や人口の規模では日本の半分ほどだが、ソフトパワーとして存在感を示してきた。その伝統ある英国が、一体どうしたことか》(12月16日付毎日新聞社説)

 私はこれは英国に対する「幻想」なのだと思う。実際、英国を議会政治の先進国と勘違いして取り入れたマニフェスト党首討論も散々であった。

多くの政治形態が罪と悲哀のこの世の中でこれまで試みられてきたし,これからも試みられるだろう。民主主義が完璧で非常に賢明であると言う人など誰もいない。実際,民主主義は,折々試みられてきた他のすべての形態を除けば最悪の政治形態だと言われてきたのであるーウィンストン・チャーチル:下院演説:November 11, 1947【了】