保守論客の独り言

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RCEP交渉について

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の首脳会議が、目標だった年内の実質合意を見送った。(中略)

 今回の会合で合意できなかったのは、貿易自由化の水準について意見の隔たりがあったためだ。

 焦点だった関税分野では、大幅に引き下げたい日豪などの先進国と、最小限にとどめたいインドとの溝が埋まらなかった。

 知的財産権の保護を巡っても、先進国が厳格なルールの導入を主張したのに対して、中国は消極的な構えに終始した》(1116日付読売新聞社説)

 日本にとっての問題は、先ほど年内発効にこぎつけた環太平洋経済連携協定(TPP)との整合性である。TPPとRCEPの2つの基準を時と場合によって使い分けるなどということを将来的に続けられるとはとても思われないし、またそうすべきでもない。何より、TPPでは中国と一線を画し、RCEPでは中国と協調するなどというようなやり方はまさに矛盾であり、「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

《RCEPには日本や中国、インドなど16か国が参加する。人口は世界のほぼ半分を占め、国内総生産(GDP)は約3割に上る。

 成長を続ける東アジア地域に、広大な自由貿易圏を構築する意義は大きい。12月に発効する環太平洋経済連携協定(TPP)とともに、保護主義政策を強める米国をけん制する役割も期待される。

 世界経済の安定を図るため、RCEP交渉を停滞させてはならない》(同)

 米国の代弁者たる読売新聞が米国の保護主義を牽制ることを促すとは驚きである。米国も一枚岩ではなく、反トランプ、民主党側の意見を代弁しているとも思われるが、いずれにせよ親中国的な意見であることは確かである。安倍晋三首相も先日中国を訪問し「競争から協調へ、日中関係を新たな時代に押し上げていきたい」などと述べたこととも軌を一にするから注意が必要である。

《公正なルールの下、域内の経済活動を活性化し、自由貿易の成果を分かち合う。こうしたRCEPの理念を各国で共有し、建設的な協議を重ねることが重要だ》(同)

 が、RCEPは中国が主導している以上、この理念は「建前」に過ぎないと言わざるを得ない。それが分かっていながらこのように書くのは、よほど読売も中国寄りなのではないかと疑われる。

《米国の離脱後、日本はTPP交渉を主導した。RCEPでもリーダーシップを発揮し、自由化に慎重なインドや中国と、他の国々との懸け橋にならねばなるまい》(同)

 私はどうして中国が主導するRCEP交渉において日本が<懸け橋>にならねばならないのかが分からない。せっかくTPPが出来たのだから、さらに多くの国を巻き込んでいくように汗をかくのが本来である。それを放っておいて中国主導のRCEPの小番頭になっても意味がない。